1月の80セントから
11月には8.35ドルに上昇

 各国企業が脱炭素に取り組む姿勢を示すために、カーボン・クレジットの購入を増やしている。一部では投機的な取引が増えている。

 その一例が航空業界のクレジット取引だ。2016年に国際民間航空機関(ICAO)は「国際航空のためのカーボンオフセット及び削減スキーム」(CORSIA)を採択し、21年からカーボン・クレジット取引が始まった。S&Pグローバル・プラッツによると、二酸化炭素1トン当たりのクレジット価格は、21年1月4日の80セントから11月10日には8.35ドルに上昇した。

 また、森林保護に基づいたクレジット取引では、一部で本来の削減効果を上回るクレジット需要が発生している。これは行き過ぎだ。

 価格高騰の原因の一つは、世界で統一されたルールがないことだ。

 カーボン・クレジット取引の仕組みは、企業などが脱炭素(再生エネルギー利用や森林保護など)に取り組んで二酸化炭素排出量を削減し、削減分を第三者機関(政府やNGOなど)に認証してもらう。その上で、脱炭素に取り組む姿勢をアピールしたい(排出削減が難しい)企業に売る。

 民間認証機関としては米国のベラやNGOのゴールドスタンダードが知られている。なお、カーボン・クレジット取引は、EUなどが定めた基準に従って運営される排出量取引制度(当局が規制対象の企業に排出の上限を割り当て、超過した企業が、上限に達していない企業の余剰分を公的な市場で買う制度)とは異なる。

 認証基準について、政府や自治体が認証機関である場合は基準が厳しく、民間は甘い傾向にある。そのため、民間認証のカーボン・クレジット取引を活用する航空、石油などの企業が増えた。その結果、買うから上がる、上がるから買うという心理が強まり、カーボン・クレジット市場はバブルの様相を呈し始めた。