感染爆発を遅らせれば、
飲み薬はさらに有効

 日本は他国に比べれば、いまだに一人一人の感染対策意識が高く、普通にマスクが着用され続けています。他国と比べてオミクロン株の感染拡大カーブを緩やかにできる可能性もあります。

 これは非常に大切なポイントです。ゆっくりと感染が進めば、軽症者、中症者対象の飲み薬の体制が整うかもしれないからです。3回目のワクチン接種の前倒し策がぎりぎり間に合うかもしれません。

 希望の光ともいえる飲み薬は、その実用化に向けて動きが加速しています。メルク社の経口抗ウイルス薬ラゲブリオ(モルヌピラビル)をPCR検査で陽性後、すぐに5日間服用すれば、入院・重症化リスクを30%減少させるという治験データがあります。これにより、医療ひっ迫の最大要因である重症化をある程度抑えられると期待できます。飲み薬は感染・発症直後の治療が有効です。

 ファイザー社の飲み薬は入院・重症化リスクを80%減少させるというデータもあります。それぞれメリット・デメリットにより使い分けたいところです。副作用もワクチンに比べ軽いという治験データもあります。

第6波では「フォローアップセンター」の
機能に期待

 東京都が開設している「フォローアップセンター」では、自宅療養者のうち、健康観察をしてくれるかかりつけ医のいない人などの健康観察、ホテル療養の手配などを行っています。

 また、東京都で築地や味の素スタジアムに設置され今も続いている「酸素ステーション」もフォローアップセンターと併せ感染拡大、医療逼迫の状況では、救急搬送先としてうまく機能していくと期待されています。

 感染が拡大したとき、特に保健所の業務が逼迫する可能性が高いので、オンライン診療や往診が必要なケースを含め、保健所へのサポート体制を整えているわけです。第5波のピーク時に重症者や重症化リスクのある入院患者以外は、自宅療養を基本とする政府の方針が出されました。自宅での健康管理や治療の体制整備は整い、これが第6波への備えとなっています。

 医療資源の最大活用、すなわち自宅療養、宿泊療養、病床をうまく活用し、保健所、病院、クリニックが協力できる体制をしっかり作っていくことが何よりも重要です。

 第2類の指定感染症を外し、インフルエンザ並みの第5類にすべきで、そうすれば病院、クリニックがすぐに患者さんの治療に入れるという議論が出ています。なかなか踏み切れない理由の一つは、5類にすると「こぼれる」患者さんが出てしまうことです。

 8月のピークのときに、保健所への感染者発生届を忘れてしまい、患者さんが自宅で亡くなったという事例が報告されました。5類にすると、このようなシリアスな事例が出てしまうことが懸念されているのです。ある程度保健所が責任をもって管理しないと、クリニックでは難しいところもあるのです。