例えば、国内A県で1年間養殖(第1段階の育成)された重量0.5kgのサケを、国内B県で半年間養殖(第2段階の育成)し重量が1.5kgになったところで出荷した場合、産地はB県になる。水産物の品質は重量によるところが大きいとして、養殖期間(=長いところルール)ではなく、重量変化の度合いで産地が決まるのだ。つまり「場所より重量の方が価値が高い」という理由で、価値を高めた場所を産地としている。

 ちなみに、農産物は、長いところルールは一切採用されていないので、すべて「収穫したところが産地」となっている。

 農産物は、種類が非常に多く、また、しかも水産物や畜産物に比べて収穫までの移動が多いので「どこが長いのか判別するのがやっかいなこと」、そして「農産物は偽装を見つけやすいこと」などの理由で、長いところルールにしていない。というより、長いところルールにすると「面倒なことが多くなるので、できない」と言った方がいいかもしれない。

アサリ偽装の原因は
長いところルールではない

 中国から輸入したアサリを蓄養した場合、中国で育てた期間より、熊本の浜で育てた期間が長ければ、熊本県産のアサリになる。貝類は、育てている間(蓄養期間中)に人が餌を与えることがないので、浜にまくか引き揚げるかのどちらかになる。そのため、今回の偽装も「蓄養自体はルール違反ではないので、偽装が見つけにくかった」という声がある。

 しかし、偽装が見つけにくかったといっても、そもそも行政は蓄養の実態を監視していない。偽装を告発したテレビの映像を見ると、かなりの人数で、浜にアサリをまいている映像が流されていた。

 一度浜にまいてしまうと、もともと浜にいた天然のアサリか、後から人の手によってまかれたアサリかを見分けることは難しい。ましてや、蓄養期間がどの程度だったかを判別するのは、監視をしていなくては無理だろう。まさに偽装集団のやりたい放題だったのだ。