ウクライナと台湾の
四つの類似点

 一方で、ロシアによるウクライナ侵攻と中国による台湾統一の動きを巡っては、ロシアと中国に類似点も存在する。それは下記の4点である。

(1)トップリーダーがアメリカ中心の世界に嫌悪感や強い不信感を抱いている

 プーチンは「欧米側の最大の目的はロシアの発展を阻止することだ」と不信感をあらわにし、習近平も「国連を中心とした秩序」を強調することでアメリカをけん制し、国際社会における中国の存在感を高めようとしている。

(2)ハイブリッド戦への対応が進んでいる

 ハッキングによる携帯電話基地局乗っ取り、発電所の機能停止、偽のラジオ局を造りフェイクニュースを流す、電磁波攻撃で敵の航空機やドローン、戦車などが使えないようにする等は両国ともにお手の物。台湾有事や尖閣諸島有事の場合、各地の在日米軍基地や自衛隊駐屯地がサイバー攻撃にさらされる恐れがある。

(3)対ウクライナ、対台湾で10倍近い軍事力を有している

 ロシアの兵員は90万人、戦闘機などの航空機は1170機、地対空ミサイル設備は1520カ所。対してウクライナは兵員20万人。航空機120機、地対空ミサイル設備は80カ所。約10倍の差がある。

 中国は兵員200万人、戦車5650両、航空機2000機に対し、台湾は兵員16万人、戦車565両、航空機500機とやはり大差がある。

(4)曖昧外交で問題が長期化している

 ロシアによるクリミア併合でアメリカなどは強い制裁を打ち出せなかった。ウクライナ侵攻でも経済制裁とウクライナへの武器供与にとどめている。中国に対しても南シナ海に人工島を造られても強い対応ができなかった。

 このように、相違点と類似点、両方が存在するのが、ロシアとウクライナ、そして中国と台湾の問題である。

 ロシアがウクライナ侵攻に成功したからといって、中国が近く台湾統一に動くというのは短絡的な見方だが、習近平はロシアの動きを注視しており、既述のような類似点もあるため、アメリカだけでなく日本も警戒を怠ってはいけないということになる。