台湾有事や尖閣有事に備えて
ウクライナ侵攻で確認すべきこと

 私たち日本人、そして日本政府は、ロシアとウクライナの停戦に向けた交渉や欧米の動きだけでなく、次の四つはしっかりチェックしておくべきだろう。

 一つはロシアの軍事力(ハイブリッド戦から空爆に至る経緯や能力、素早さ)、二つめはアメリカの対応(ウクライナのために何をしたか)、三つめはウクライナ自身の防衛力(どれだけ持ちこたえられたか)、そして四つめが隣国の動き(ウクライナで言えばロシアに協力したベラルーシの動き)である。

 台湾有事や尖閣諸島有事に備えるなら、これら四つについて、「ロシアの軍事力」を「中国の軍事力」に、「アメリカの対応」を「アメリカの支援」に、「ウクライナ自身の防衛力」を「台湾および自衛隊の防衛力」に、そして「隣国の動き」を「北朝鮮の動き」に置き換えることで、岸田政権はどうすべきか、私たちは何を覚悟すればいいかがわかるはずだ。

台湾有事 米中衝突というリスク『台湾有事 米中衝突というリスク』
清水克彦 著
平凡社新書
税込946円

「私たちは2014年以降、ウクライナに攻められ、故郷のルガンスクを脱出しロシアに逃げました。今でもあのときの哀しさは忘れられません。攻めるのも攻められるのも戦争はいやです」(ウクライナ東部ルガンスク州からロシアに脱出した男性)

「美しい街がロシア軍の空爆によって破壊され、両親の様子もわからない。こんな思いをするなんて想像もつかなかった。事前に話し合いで解決できなかったのでしょうか」(ロシア軍に攻撃を受けたウクライナ・ハリコフ在住の女性)

 ウクライナを巡る取材で、筆者は、ロシアに逃げた人、そしてロシアから攻撃を受けた人、双方の話を聞いた。どちらも私たちも教訓とすべき言葉ではないだろうか。

(政治・教育ジャーナリスト/大妻女子大学非常勤講師 清水克彦)