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相川俊英の地方自治“腰砕け”通信記

トンネルだけではない「インフラ事故」の恐怖
リスクを貯め込むダムや“ため池”の真実

相川俊英 [ジャーナリスト]
【第59回】 2012年12月25日
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笹子トンネル事故で痛感した日常の危うさ
老朽化したインフラはトンネルに限らない

 我々の日常生活がいかに脆く危ういものかを痛感させられたのが、笹子トンネル事故の発生だ。誰もが「安全」と信じ切って利用していたトンネルの天井板が崩落し、たまたま通りかかった9人の方が犠牲となった。つり天井を固定するアンカーボルトや接着剤の劣化が、崩落の要因と見られている。

 老朽化したインフラが突如として、我々に重大な災厄をもたらす凶器と化した。あってはならぬ痛ましい事故に誰もが震撼した。この重大事故の発生を受け、国土交通省は鉄道も含めたトンネル天井部の緊急点検などを指示した。

 しかし、老朽化したインフラはトンネルに限らない。全国各地の橋やダム、上下水道、港湾や空港など、いずれも高齢化している。また、耐用年数を超えていなくても、補修や点検がなおざりにされ、脆弱化しているインフラも少なくない。なかには、「構造的な問題を抱えているのでは」と懸念されるものさえある。

 我々の日常生活は「安全」の上に立脚しているのではなく、むしろ、薄氷の上で営まれているというべきだ。それが見えない現実の姿ではないか。

 昨年の東日本大震災は、甚大な被害をもたらす未曾有の災害となった。想定外の事態が続発し、我々を窮地に陥れた。あり得ないと思っていたことが次々に現実となったのである。その1つにダムの決壊があった。

 「車両通行止め」の柵を越え、狭い車道を歩くこと数分。人の気配は全くなく、周囲は静謐そのものだった。右手の窪地が大きく広がる地点まで登ると、「立ち入り禁止」と書かれた柵が現れた。

 その先を見て、驚愕した。幅4メートルほどの道路がそっくり消えている。スポンとえぐりとられていたのである。視線の先は深い谷となっており、百数十メートル先に対岸の崖がはっきりと見える。

 寸断された道路は、もともとダムの堤の上につくられていた。そのダムの堤が丸ごと下流に崩落し、跡形もなく流れ去ったのである。初めて目にした異様な光景に、思わず息を飲んだ。東日本大震災で決壊した藤沼ダムの現場である。目の前に広がる空間に以前、水を堰き止めていたダムがあったとはとても思えなかった。

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相川俊英 [ジャーナリスト]

1956年群馬県生まれ。放送記者を経て、1992年にフリージャーナリストに。地方自治体の取材で全国を歩き回る。97年から『週刊ダイヤモンド』委嘱記者となり、99年からテレビの報道番組『サンデープロジェクト』の特集担当レポーター。主な著書に『長野オリンピック騒動記』など。


相川俊英の地方自治“腰砕け”通信記

国政の混乱が極まるなか、事態打開の切り札として期待される「地方分権」。だが、肝心の地方自治の最前線は、ボイコット市長や勘違い知事の暴走、貴族化する議員など、お寒いエピソードのオンパレードだ。これでは地方発日本再生も夢のまた夢。ベテラン・ジャーナリストが警鐘を鳴らす!

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