華僑が移動し感染拡大に影響か、航空ルート制限も

 上海市は今、2020年冬に経験したコロナまん延下に次ぐ最も厳しい状況に置かれているという。PCR検査の体制強化はもちろん、市をまたぐ人の移動を制限し、長距離バスの運行もやめた。市内の小中学校も、今月12日からオンライン授業に切り替わった。

 上海の住民の間では、「感染拡大は香港からの人の移動が招いたものだ」と認識されているようだ。春節の時期(1月31日~2月6日)に世界に散らばる華僑が香港経由で里帰りした結果、大陸内にオミクロン株が広がったとみられている。

 確かに過去2カ月間、香港における感染拡大は深刻だった。香港からのフライトを受け入れる上海では、3月12日の時点で、上海で治療中の601の輸入型の症例のうち、香港での感染と特定できるものが466例にも上った(数字は上海市衛生健康委員会)。

 そのため上海市は、国務院(日本の内閣に相当)の決定を経て、3月21日~5月1日まで、上海を降機地とする106のフライトを成都、大連、福州、杭州、済南、昆明、南昌、寧波、厦門、太原、長沙、重慶の12の空港に分散させることを発表した(新華社、3月15日)。フライトの中には、東京を出発するものもある。中国に向かうビジネスマンにも影響しそうだ。

今年秋には「ゼロコロナ」政策も崩壊?

 2020年4月に武漢市の都市封鎖が解除されて以降、中国では局地的な感染にとどまり、全国レベルでの感染拡大は例がなかった。しかし、強い感染力と軽症・無症状を特徴とするオミクロン株は対策も厄介であり、「ゼロコロナ」への道のりをさらに困難にしている。

 中国ではすでに医療資源の逼迫(ひっぱく)が懸念されており、限られたリソースやコストの負担増を思えば、従来通りの「ゼロコロナ」の遂行も限界に到達するのは時間の問題だ。物理的にもキリがなく、また何よりも国民が疲れ果てている。中国に駐在する日本人の間でも「中国のゼロコロナ政策もこれまでではないか」といった声も出始めている。

 中国指導部の動向に詳しい亜細亜大学の范云涛教授も、「ゼロコロナ政策も長くは続かない。指導部もその限界に薄々気が付いている。せいぜい頑張っても、今年秋までではないだろうか」と話す。

 今年秋に開催が予定されている第20回党大会では、習近平総書記の3期目続投の決定が確実視されているが、「ゼロコロナ」は、その一世一代の大イベント開催をつつがなく進行するための地固めにすぎない。だとしたら、その後の「ゼロコロナ政策」は、何らかの形で軌道修正が図られる公算が大きい。