こうした「ぴえん」というワードを軸にして、歌舞伎町に通うZ世代や当地の「推し」カルチャーなどにアプローチしたのが、現役大学生ライターの佐々木チワワ氏。自身も15歳から歌舞伎町に足を踏み入れ、現在にかけて4年間ホストクラブに通っている彼女は、「ぴえん系女子」についてこう語る。

「病んだ言動をしていそうな女子は『ぴえん系女子』と呼ばれます。地雷系メークで、ストロング系アルコールをストローで飲みながら、(推しメンを称賛するという意味の)『推ししか勝たん』と言っている女子が、まさにそう。『ぴえん』はファッションや行動様式、発言も包括したステレオタイプのイメージとなりました」

 漫画で「ぴえん系女子」が描かれたり、雑誌でファッションや言動の特集が組まれたりするなど、徐々に「ぴえん系」の人気は高まっていった。さらに、「歌舞伎町の持つ“闇”とぴえん系女子がもつ“病み”が融合した結果、過激化することもある」(佐々木氏)といい、リストカットや市販薬などを過剰摂取するOD(オーバードーズ)、大量の飲酒や喫煙、風俗や水商売で働くことでさえファッションの一部として行う人もいるという。

ボロボロになりながら
「推し」に貢ぐ自分がエモい

 こうしたぴえん系女子が集う歌舞伎町で、近年まれに見るほど高まっているのは「推し」カルチャーである。

「以前も、推しのホストやメンズコンカフェ(コンセプトカフェ)のキャストに多額のお金を使う人はいましたが、近年は未成年や20代前半の若い子にもその文化が広まっています。『推しは推せるときに推せ』という言葉がすごくもてはやされ、推しに貢ぐ額が青天井になっています。稼ぐ能力もない未成年でも『推すために稼がないと』という思考になっているケースがあるのです」

 佐々木氏によれば、18歳以下でも入店できる歌舞伎町のコンカフェには数百万円のお酒が置いてあるという。つまりは、推しのキャストのためにその額のお酒を誰でも注文することができる仕組みになっているわけだ。

「同世代の女の子が風俗で稼いだお金を推しに貢いで、彼に優しくされている場面を見れば、まだ経済力のない女の子は『私も風俗しなきゃ』と思ってしまう。実際に、『推しのために春からデリヘル嬢します』とプロフィール欄に書いている高校3年生のTwitterアカウントもあるほど。世間でも『推し活』が市民権を得ていますが、若い子が『推しにお金を使えば使うほどいい』と考えてしまうのは、少し危険だと思います」