「商業的に『推し』が推奨されている世間のムードも、上記のようなことを加味すると危険な側面がある。例えば、推しに貢ぐ金額にこだわってしまうと、自分の価値を貢げる額という『値段』でラベリングしがちです。ホストクラブに行く女性の中には『私は月100万円使えるよ』と最初から自分のステータスを金額で提示する人もいます。これだけ貢げるから大事にしてね、という思考に陥ってしまうのです。歌舞伎町や推しカルチャーに染まれば染まるほど、値段で自分をラベリングし、お互いに数字だけの端的なつながりになってしまうケースもあります。さらに、『あの客よりもお金を使ってやる』という競争にもなるので、際限がありません」

 ただ、佐々木氏はこうした推し活にハマる子どもたちへの理解を大人には求める。

「歌舞伎町に集ったり、推し活に励む子は居場所が欲しかったり、何者かになりたかったりする気持ちがあります。幼い頃からにSNSに触れ、自分よりも才能のある国内外の同世代を見て育つ中で、常に『自分にしかないもの』や自分の存在価値を探してしまうのも無理はありません。それらは簡単に見つかるわけでもないので、誰かを推したり、推されたりすることで存在価値を確かめている“ぴえん”な背景があるのです。大人は、そんな若者を否定したり、勝手に決めつけたりするのではなく、理解する姿勢を少しでも持ってほしいです」

 実際、トー横キッズと呼ばれたかいわいの中には、ネグレクトや過干渉など家庭や親との関係にトラブルがあった子どもたちもいたという。

「もちろん、若いから間違った言動をすることもありますが、上から目線で正すのではなく、若者たちの文化や価値観を理解した上で導いてほしいと思います。上から目線の説教は、おじさんの“自己満”なので、それに子どもたちを巻き込まないでほしい」

「ぴえん」な言動を一笑に付さず、理解する姿勢が求められるのだろう。