「コロナ前まで年に数回、訪朝したり、こっち(中国)でも(北)朝鮮人と会ったり、交渉したりする機会が多いのですが、朝鮮の人たちは、外国人との結婚が禁止されていると思っていました。私以外の多くの朝鮮族もそう思っていたので『えー!』となって盛り上がったわけです」(瀋陽・朝鮮族貿易商)

北朝鮮では現在
国際結婚は禁止されていない

 実は、日本人の北朝鮮研究者も同じ認識を持っていたようで、複数の研究者やジャーナリストへ聞いても、一般の北朝鮮人は国際結婚が禁じられていると思っていた人が多い。

 北朝鮮情勢に詳しい國學院大學栃木短期大學兼任講師の宮塚寿美子氏によれば、

「朝鮮民主主義人民共和国行政区域法、第4章の『家族関係第36条結婚の効力について』には、『夫婦の国籍が異なる場合は、夫婦が一緒に住んでいる国の法を、夫婦の居住地が異なる場合は夫婦と最も密接な関係がある国の法が適用されるとのこと』となっています。

 現在、国際結婚は禁止されてはいません。ただ、北朝鮮は、現実的に外国との往来が自由ではないため、外国人との結婚が禁止が社会通念になっているのでしょう。以前は、法律で禁じていたかもしれませんが、現在は変わったようです。ベトナム人と結婚して、ハノイに住んでいる北朝鮮人女性がいたりもします」(宮塚氏)

 現在、平壌にいると思われる料理人の藤本健二氏(故・金正日〈キム・ジョンイル〉総書記の元専属料理人)のように最高指導者に認められたような特殊な場合を除き、外国人との結婚は筆者も聞いたことがなかった。

 1970年代から80年代に日本から北朝鮮へ拉致された拉致被害者に注目すると、日本人同士か韓国人を含む外国人と結婚しており、北朝鮮人と結婚したというケースは確認できない。

 北朝鮮が女性を外国人に対してどう扱っていたかは、曽我ひとみさんの夫であった故チャールズ・R・ジェンキンス氏の著書『告白』を読むと、その一端を知ることができる。