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優等生タイプでやる気もある新人が、希望通り営業部に配属された。上司は「伝説の営業マン」とまで呼ばれた優秀な人物。しかし熱血指導があだになり、新人は「パワハラ上司」や「ブラック企業」と不満をTwitterへ頻繁に投稿するように……。SNSで噂が広まり炎上、会社に損害が出た場合、企業はどう対処すべきだろうか。また、新人社員の責任は?(社会保険労務士 木村政美)

<甲社概要>
従業員数400名の専門商社で複数の支社がある
<登場人物>
A:新卒入社の22歳。本社営業部勤務
B:本社主席営業課長でAの上司。(以下「B課長」という)40歳。入社当時から営業一筋で成績は会社で常にトップ。「伝説の営業マン」と呼ばれていた。課長昇進後は部下の育成を一手に担当、優秀な営業マンを輩出するべく日々奔走している。
C:総務部長(以下「C部長」という)
D:甲社の顧問社労士

優秀な新卒社員が営業希望で入社してきた

「A君は採用試験で面接官に、『営業の仕事がしたい』と言ったそうだね。新入社員で営業職を希望するのはなかなかいないから君は見どころがある。ウチの営業マンは皆優秀で仕事をバンバン取ってくるから給料も他の部署よりは高い。よかったな、君はもう安泰だ」
「B課長、よろしくお願いします」
「任せなさい!そのかわり優秀な営業マンになるために、これからビシビシ鍛えるからな」

 Aに期待し、一人前の営業マンに育てようと決心したB課長は、新入社員だからと甘やかすことはせず、あいさつのしかたや身だしなみなどのマナーから仕事の基本を厳しく教え込んだ。たとえば出社時にAが小声で挨拶をすると、

「声が小さい。それじゃみんなに聞こえないぞ。営業マンは第一声が大切。挨拶は元気よくしなきゃダメだ。もう一度入室からやり直し!」

 B課長から頼まれたプレゼン用の資料をコピーして渡したところ、

「印刷が曲がっていたり字がかすれた資料はお客様には渡せない。だから全部やり直し!」

 注意されたAがうんざりした顔をすると、

「どうした?営業は顧客に否定されるところから始まるんだぞ。しょげている暇があったら、言われたことをやりなさい。分からないところは、質問すればいくらでも教えてあげるから」

 優等生タイプのAはこれまで親や学校の先生に厳しくされたことがなかったので、日を追うごとにB課長の指導を受けるのが嫌になった。B課長は自分がやることなすことすべてを否定しているように思えたからだ。