小売業は霞が関で後回し?
出店も放置され、過度な競争に陥った

 そもそも日本全国の小売業がメーカーの値上げを許容し、消費者に適切に転嫁すれば、こうしたバトルは起きないはずだ。

 この疑問をひもとくヒントが、ある役人の言葉から浮かんでくる。「我々にとって、小売・流通業は優先順位が最後。さほど重要なポジションではない」(経済産業省OB)。

 霞が関内でのこうした意識もあってか、流通小売業は野放図となった。そして、過度な出店も放置された。

 かつて流通は大規模小売店舗法(大店法)に守られ一度、出店してしまえばライバルの小売店が出てくるまで時間があった。それどころか、出られない状態が長いこと続いた。最初に出店した企業は、大店法に守られ、その間にガッチリと客をつかんで、後は安泰という図式を作り上げた。

 今や全く逆の構図。今日の街中の光景を思い出してほしい。なんと流通業が多いことか。コンビニは下手すると道路を挟んで、向かい合わせになっている。ドラッグストアも間隔を置かずにあるケースも少なくない。もちろん、スーパーも至近距離にある。

 小売りの安売り体質の根底にあるのは、出店を野放図にし、業界を過度な競争へと陥れた役所にほかならないのではないか。

 ウクライナ侵攻や円安ばかりに注目が集まるが、小売りの安売り体質を改善するには、行政による小売業界への“テコ入れ”も必要なのだろう。