2月24日の軍事侵攻開始から2日後にロシア国営通信社が「ウクライナが戻ってきた」と誤配信(すぐに削除)したように、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は短期戦での勝利に自信を持っていたはずだ。しかし、自国の領土と尊厳を守り抜くウクライナ国民の決意や結束は強く、一度は首都キーウ(キエフ)周辺にまで達したロシア軍の侵攻は後退を余儀なくされている。

 また、米シンクタンク「戦争研究所」は4月30日、ロシア軍がウクライナ東部で大きな戦果の進展を得られなくなりつつある一方、ウクライナ軍が近く広範な攻撃に出ることが可能との分析を発表した。

ウクライナ軍の戦力を高める
米国のインテリジェンス能力

 ウクライナ軍の戦力を高めるのは、米国や英国を中心とする西側諸国の強力なサポートだ。特に、世界最強レベルのインテリジェンス能力を持つ米国の機密情報は効果絶大で、標的選別などの支援によってロシア軍の将官級が相次いで制圧されている。

 米国防総省は否定するものの、4月に沈没したロシア黒海艦隊の旗艦「モスクワ」は米国からの情報を基に攻撃したとされる。

 米国は衛星情報や通信傍受などの情報収集力を駆使しており、ある外務省幹部は「ロシア軍の位置情報を提供することにより、軍事力で劣るウクライナ軍の効果的な反撃を可能にしている」と語る。

 米露衝突を懸念する米国のジョー・バイデン大統領は当初、「第3次世界大戦は避けなければならない」と軍事支援には消極的だった。だが、対露包囲網の構築を求める国際世論の高まりとともに方針を転換。「大統領権限で使える予算はほぼ使い果たした」と言及するまで支援策を重ね、長距離火砲の弾薬や対砲兵レーダーなどを提供してきた。

 5月9日には、ウクライナへの軍事支援を迅速化する「武器貸与法」も成立している。バイデン大統領は「ロシアがもたらす残虐行為は常軌を逸している」として、ウクライナ軍の勝利に向けて強力にサポートする決意を示す。