プーチン大統領を支えてきたロシアの新興財閥「オリガルヒ」は、西側諸国による対露制裁対象として資産凍結され、邸宅や豪華ヨットなどの没収に悲鳴を上げる。ロシアは22年の国内総生産(GDP)が10%を上回るマイナス成長になると見込まれており、国民生活への大打撃は避けられない状況だ。

 プーチン大統領の「誤算」は続く。これまで軍事的中立を堅持してきたフィンランドとスウェーデンが北大西洋条約機構(NATO)への加盟申請に傾き、5月18日に正式に申請した。また英国と両国は、有事の際に軍事支援する安全保障協定に合意した。

 ロシアはウクライナ侵攻の理由を「NATOの東方拡大」などとしていたが、侵攻がかえって北欧の加盟申請を促進する形になったことは皮肉といえる。

 ロシア国内でも「特別軍事作戦」への支持が低下してきており、さらに長期化すればプーチン大統領は厳しい立場になっていくのは間違いない。ただ、今回のウクライナ侵攻で敗北すれば、20年以上も握ってきた絶大な権力を失うことになる。そのため「自分からは絶対引くことはないだろう」(防衛省幹部)との見方がもっぱらだ。

 米国のアブリル・ヘインズ国家情報長官も今後数カ月は「予測不能で激化する恐れもある」と警告する。

 第3次世界大戦への扉に完全な鍵が閉まっているとは言い切れないウクライナ情勢。ゼレンスキー大統領は「ウクライナにはまもなく二つの戦勝記念日が存在するようになる。そして、誰かにはそうした日がなくなる」と強気の構えを見せるが、核戦力を誇示するプーチン大統領が引く気配は一向に見えない。

 ある外務省幹部は「ウクライナ東部での攻防は依然激しいが、首都キーウが陥落することはもう考えにくい」との見方を示した上で、こう願望をにじませた。「西側諸国の支援を受けるウクライナの反撃力が上がり、無辜(むこ)の命が失われる状況が終わる『番狂わせ』が1日でも早く訪れることを期待するのみだ」。