さらに、トヨタとの連携では、インドを電動車の“生産基地”にすることでそれらをアフリカに供給し、トヨタ・スズキのアフリカ市場開拓につなげるといったことも予想される。そうなれば、デンソーや豊田通商など、トヨタグループ各社を巻き込んだ展開にも発展しそうだ。

 まとめれば、俊宏体制の戦略は、まず圧倒的な強さを持つインドにおいて市場の成長力に対応できるように、生産力増強のための投資を優先する。さらに、トヨタグループとの提携・協力関係を生かし、スズキとしてのEVシフトをインドで先行、それ以外の地域にノウハウを発展させるための“基地化”を進めていくことになるだろう。

売り上げ増も原料高で減益
今期は生産挽回がキーに

 スズキの22年3月期連結決算は、売上高は前期比12.3%増となる3兆5684億円、営業利益は同1.5%減となる1915億円、純利益は同9.5%増となる1603億円となった。グローバルの販売台数は270万台と同5.3%増となった。主力のインド市場は136万台で同3.2%増だったものの、国内は半導体・部品不足による生産停滞が響き56万台、同13.3%減にとどまった。営業減益は、原材料高騰の影響が大きい。

 これに対し、今期22年度見通しは売上高が9.3%増の3兆9000億円と過去最高を見込む。グローバル販売は7.4%増の290万台を予測しており、半導体・部品不足が続くものの、俊宏社長は「生産さえできれば需要に応えられる。ひとえに生産体制にかかっている」と、需要の底堅さを強調した。インド、国内で、それぞれ30万台と20万台のバックオーダーを抱えていることも明らかにした。営業利益は、原材料価格の高騰が引き続き重荷となるが、販売増で1950億円、営業利益率にして5.0%との見通しを示した。