なぜ米国株の割高感が強いのか
6月と7月には追加利上げが実施される方針

 米国の株価が8週連続で下落した一因として、歴史的な割高感の強さがある。5月20日時点で、ノーベル経済学賞受賞者である米イェール大学のロバート・シラー教授が考案した「CAPE」は32.51倍だ(出典:http://www.econ.yale.edu/~shiller/data.htm)。

 CAPEは、過去10年間の1株当たりの純利益を平均し、その値をインフレ率で調整して実質化したPER(株価収益率)である。一般的に、CAPEが25倍を超えると株価は割高と考えられる。

 シラー教授のホームページに公開されている時系列データを確認すると、1929年9月末にCAPEは32.56倍を記録し、その後は急速に株価が下落した。足元のCAPEの水準を踏まえると、理論的に、いつ、株価が大きく下落したとしてもおかしくはない。一時、最強のインデックスとして多くの投資家の注目を集めたナスダック100の平均PERも21.37倍と過去の長期平均(14~17倍)を上回っている。

 また、株式の時価総額と名目GDP(国内総生産)の比率である「バフェット指数」も高い。20年3月中旬以降にバフェット指数は急上昇し、21年には200%を超えた。コロナ禍における不景気を下支えするためFRBなどが金融緩和を強化した結果、米国経済を大きく上回る規模まで株式の時価総額が膨れ上がったのだ。

 長期的に、株価は経済成長率に連動する。言い換えれば、経済成長率をはるかに上回る株価の上昇は持続可能ではない。2000年9月のインテルショックや08年9月のリーマンショックのように、株価が大きく下げる局面ではバフェット指数は100%を上回っていた。つまり、経済の実力以上に株価が上昇し、割高感が高まった。

 21年11月、FRBは、物価上昇は一時的とする見方が誤っていたことを認めた。その後は時間の経過とともにFRBがインフレ退治に必死になる姿勢が鮮明となり、6月と7月には50ポイントの追加利上げが実施される方針だ。

 6月からはバランスシートの縮小も始まる。世界的な株価高騰を支えた超低金利と過剰流動性の解消が同時に進む。それはいまだかつて世界の投資家が経験していないことだ。その懸念から、90年ぶりの株価下落が起きたのだ。