中国経済の減速が一段と鮮明に
米国に代わる世界経済のけん引役は…?

 米国だけではない、世界の株式市場を取り巻く環境が、急速かつ大きく変化し、そのスピードは加速している。そして、変化をもたらす要因も増えている。が、主要投資家は、そうした状況にまだ対応できていないようにみえる。

 変化をもたらしている要因とはすなわち、ウクライナ危機やコロナ禍、米中対立、脱炭素などさまざまだ。18年以降に本格的に激化した米中対立によって、1990年代に確立されたジャスト・イン・タイムのグローバルサプライチェーンは不安定化し、コロナ禍やウクライナ危機が重なって、企業はサプライチェーンの再編を余儀なくされている。中国の生産年齢人口が減少に転じて生産コストが上昇していることも、「ディ・グローバリゼーション」の動きを勢いづかせている。

 さらにはウクライナ危機である。欧州を中心にエネルギー資源や穀物、自動車部品や半導体などの需給が逼迫(ひっぱく)している。わが国では半導体や医療機器に利用されているヘリウムが不足し始めた。供給制約の深刻化によって企業の事業運営コストは増加し、業績の悪化懸念が高まっている。

 中国経済だけを見ても、ゼロコロナ政策や不動産バブル崩壊、IT先端企業への締め付け強化によって減速が一段と鮮明だ。リーマンショック後の世界経済は米国と中国が緩やかに回復し、それに引っ張られる形でアジア新興国や欧州、わが国の景気も緩やかに持ち直してきた。

 他方、米国に代わる世界経済のけん引役は見当たらない。今のところ米国経済は旺盛な個人消費に支えられて相応の回復ペースを維持しているが、賃金高騰や資材価格の上昇、調達難によって景況は不安定化し始めている。内需が弱い米国以外では、生産者物価が急騰していて、価格転嫁を余儀なくされる企業が急増している。世界の株式市場はまだ、そこまでの急激な環境変化に対応できていないと考えられる。