文在寅政権は合意認めず
慰安婦問題を再提起

 しかし、17年に発足した文在寅政権は、朴政権が行った慰安婦合意を認めなかった。文在寅政権は外交部に「慰安婦合意検討タスクフォース」を設置し、再検証を行った。

 その後、康京和(カン・ギョンファ)外相が発表した検討結果は「再協議は要求しない」「日本政府が(元慰安婦を支援する財団に)拠出した10億円は、韓国政府の予算を充当し、この基金の今後の対応の方向性については日本政府と協議する」「被害者の意思をしっかり反映しなかった2015年の合意では真の問題解決にならない」というもので、15年の合意では問題解決にはならないと主張した。

 さらに女性家族省は18年11月21日、日本が10億円を拠出した元慰安婦支援の財団の事業を終えることを決定。「今後解散のための法的手続きを取る。残金57.8億ウォン(約5億8000万円)については、関連団体などの意見を聞きながら、処理方策を用意していく」こととした。女性家族省は正義連の息のかかった省であり、その意向を反映している。

 そればかりでなく、慰安婦合意を否定する動きは司法府にも波及した。2021年1月ソウル中央地裁は元慰安婦らが日本政府に対して提起した訴訟において、国際法上の主権免状の適用を否定し、日本政府に対し、原告らに各1億ウォン(約1000万円)の支払いを命じる判決を宣告した。しかし、この判決には司法府部内にも異論もあり、同年4月の類似訴訟の判決では、主権免除の原則を踏まえ、原告の訴えを却下している。

 文在寅政権もこの合意は「公式合意」であることを認めている。しかし、その実態は、この合意では問題解決には至らず、新たな交渉が必要だとするものである。正義連はこの合意が最終的かつ不可逆的合意だとは認めておらず、あらゆる方法で問題解決を妨害している。

韓国外交部は慰安婦合意を
正義連に事前説明していた

 26日に公開された外交文書は4件ある。それらの文書は、李相徳(イ・サンドク)外務省北東アジア局長(当時)が、正義連代表だった尹美香(ユン・ミヒャン)氏に、日韓交渉の過程と合意の主な内容を事前に通知したものである。

 この文書は、「朝鮮半島の人権と統一のための弁護士会(以下、弁護士会)」が裁判所に公開を求め提訴していたものであり、ソウル高裁の判決で公開が命じられた。

 内容は 李相徳局長が慰安婦合意の理解を得るため、15年3月から12月までの間に計4回、尹美香氏と面会したことを示すものである。