ちなみに、この資料では副業のメリットとして、「副業を通じた起業は失敗する確率が低くなる」「副業をすると失業の確率が低くなる」「副業を受け入れた企業からは人材不足を解消できた、といった肯定的な声が大きい」といった研究や調査の結果を挙げている。そして、該当する段落は、「成長分野・産業への円滑な労働移動を進めるため、さらに副業・兼業を推し進める」と結ばれている。

 副業の推進は、厚労省だけでなく内閣府を含めた政府全体の方針であるように見える。新しい資本主義の「グランドデザイン」の中で、副業の推進は「スキルアップを通じた労働移動の円滑化」を図る施策の一つとして位置づけられている。

社員の副業を認めない企業には
「説明責任」を果たすよう求める

 これまでにも企業は、(1)労働者の安全、(2)業務秘密の保持、(3)業務上の競合回避、(4)就労先の名誉や信用の4点のいずれかを理由に、副業を禁止または制限できると定められていた。一方、今回の方針改定では、企業側に「なぜ社員の副業を認めないのか」について説明責任を果たすよう求めることになる。

 企業には、社員の副業を禁止ないし制限する納得できる理由を提示することが求められる。そして、就職活動中の新卒者や既存の社員も含めて、企業の副業に対する方針を評価して、働く側が企業を選ぶ事例が増えるだろう。

 結論を率直に言う。読者の多くを占めると思われる会社員の皆さんは、せっかく政府が企業に社員の副業を認めるように促しているのだから、この機を捉えてぜひ副業を始めてほしい。

 一定の割合の人が副業を手掛けるようになると、続く人は大いに気が楽になる。今なら、自分のためだけでなく他人の役にも立つ。