「トランプは“終わった人”ではない」、潜入ジャーナリストが語る大統領返り咲きの可能性Photo:Alex Wong/gettyimages

2020年の米大統領選で現職大統領ながら落選したトランプ 。敗北宣言を先延ばしして、不正選挙があったと主張する姿は多くの人が記憶しているだろう。一度は「終わった人」になったのかと思われたトランプだが、ジャーナリストの横田増生氏は「米国でのトランプ人気は決して衰えたとは言えない。場合によっては、2024年の大統領選で返り咲く可能性もある」と指摘する。19年12月から21年1月までの1年超にわたって米国で暮らし、共和党の選挙ボランティアとして潜入取材を敢行、「『トランプ信者』潜入一年」を出版した横田氏に話を聞いた。(取材・文/ダイヤモンド社出版編集部 津本朋子)

在任中についたうそは3万回以上!
今なお4700万人いる「トランプ信者」

――横田さんの著書には、トランプがTwitterや集会などで自分に有利なうそをつきまくり、支援者を巻き込んでいく姿が、克明に描かれています。在任中についたうそは、ワシントン・ポストによれば、なんと3万回を超えるのだそうですね。

 ジャーナリストたちは、トランプのうそに「ファクトチェック」で応戦しました。僕もこの本を書くにあたっては、ファクトチェックとの闘いでしたね。「真っ赤なうそ」から、「部分的なうそ」まで色々あるから、事実関係を丹念に調べて判断していくのは大変でした。ワシントン・ポストはトランプのうそを3万回以上、きっちりカウントしてウェブサイトに載せており、彼らの売りの一つになっています。それを見ると、トランプが好んでつくうそがあることがわかります。「選挙は盗まれた」(2020年の大統領選で不正投票が行われたという意味)も、そのうちの一つですね。

 しかし実際には、選挙結果を覆すほどの不正はありませんでした。トランプは大統領選がらみで62件の訴訟を起こしましたが、61件で負けました。唯一勝訴した裁判も、ごく小規模な不正が認められただけ。司法長官(当時)のビル・バーも、司法省と連邦捜査局(FBI)が合同で調査した結果、「選挙の結果を覆すような大規模な不正は見つかっていない」と語っています。

「トランプは“終わった人”ではない」、潜入ジャーナリストが語る大統領返り咲きの可能性横田増生(よこた ますお)1965年、福岡県生まれ。関西学院大学を卒業後、予備校講師を経て、アメリカ・アイオワ大学ジャーナリズム学部で修士号を取得。93年に帰国後、物流業界紙「輸送経済」の記者、編集長を務める。99年よりフリーランスとして活躍。2020年「潜入ルポ amazon帝国」で第19回新潮ドキュメント賞を受賞、2022年「『トランプ信者』潜入一年」で第9回山本美香記念国際ジャーナリスト賞を受賞。主な著書に「仁義なき宅配」「ユニクロ潜入一年」など。

 しかし、こうした自分に異を唱える言論を、トランプはすべてフェイクニュースだと一蹴します。

 たとえば、ウォーターゲート事件で辞任したニクソンの頃は、テレビといえば3大ネットワーク(ABC、NBC、CBS)のみ。TwitterやFacebookはもちろんCNNやFOXニュースもまだない時代ですから、うそをつきまくって、それを国民に信じさせるなんて不可能でした。しかし、現代では大統領自らがSNSで有権者に直接、発信できるのです。「大統領が言ってるんだから」という単純な理由で、頭から信じてしまう米国民は大勢いますね。

 うそをつきまくり、ファクトチェックに対してはフェイクニュースと決めつける。そんなトランプを信じて「何があってもついていく」人たちは、今も4700万人ほどいるのです。