――トランプ自身は独裁者的な人物ですが、実際に独裁政治を行えるかどうかは、国の体制にもよります。米国の場合、法律や政治体制が独裁を許すものにはなっていません。ただ、3万回ものうそをついても、弾劾でクビにはなりませんでしたね。

 たとえば、ロシアゲート事件では、FBIのコミー長官(当時)と会食をして、自分に忠誠を誓うよう迫りましたが、拒否されました。トランプには、政府高官は法に従うべきだという考えはなくて、「俺が任命してやったのだから、俺に従え」というわけです。しかし、さすがに通らず、ストップがかかるのです。トランプが再選できなかったのも、米国民がノーを突きつけたからですしね。

 弾劾については、まず、下院で弾劾訴追決議案を提出し、過半数が賛成すると可決。次に上院での弾劾裁判に移りますが、ここでは3分の2が賛成すれば、有罪となります。非常にハードルが高いんです。トランプは、弾劾訴追された回数が2回と、歴代大統領で最多ですが、結局有罪にはなっていません。やはり国民が選挙で選んだ大統領ですから、そんなに簡単にはクビにできない仕組みなんです。

 ただ、もし24年の選挙でトランプが返り咲けば、米国はさらに混乱することになると思います。ご存じのように、米大統領の任期は2回の選挙で勝てば、最長8年です。面白いことに、トランプの4年間を振り返ると、後半になるにつれて、うそがどんどんペースアップしているんです。「この程度じゃ、次の選挙に勝てない」と思ったんでしょう。だけど、やり過ぎても選挙に負ける。彼なりにブレーキも踏んでいたはずなんです。

 しかし、再選すれば、もう次は立候補できないわけですから、自制する必要がなくなります。24年の選挙でもし勝てば、その後の4年間は、さらに言いたい放題、やりたい放題になる恐れはありますね。米国の大統領は軍隊の最高司令官でもあり、大統領だけが核兵器使用の命令を出すことができます。トランプの独断で全てを決めることはできない仕組みにはなっているものの、米国のみならず、世界にとっても、大きなリスクだと思いますね。