年代については、40代以上が最も多かったものの、20代以上はどの年代もほぼ均等に10%台で並んだ。ひきこもり始めてからの期間は、「3年未満」が半数近い45.0%を占めた。「10年以上」が25.7%と長期化の傾向を示す一方で、「1年未満」も16.2%に上った。

 この結果からは、特にコロナ禍以降に、年齢や性別に関係なくひきこもる人が増えている傾向がうかがえる。いわば、ひきこもり当事者が多様化しているわけだ。江戸川区によると、一人暮らしの回答者にはコロナの影響でひきこもった人が多かったという。

 多様化の要因などはつかめておらず、江戸川区は7月11日に、ひきこもり経験者や家族の代表、学識経験者、関係機関などで構成する委員会を作って、これから詳しく分析していくとともに、「ひきこもる人の権利を尊重する条例」を制定する予定だ。

 また、今回の調査がきっかけで支援につながった人も数多くいた。江戸川区によると、届いた調査票を見て、本人や家族が「相談させてください」と電話をかけてくるなど、3月末までの段階で54人が支援につながった。区への相談は、その後も増えているという。
 
 支援を受けた人の中には、ひきこもり状態を脱却して就労を始めたケースもある。その一人が、江戸川区に住む20代女性のAさんだ。

いじめに遭った過去を持つAさんは
いかにして一歩踏み出せたのか

 Aさんは、母、姉、祖母の4人暮らし。小学校時代にいじめに遭い、学校に行ったり行かなかったりを繰り返した。本稿では、ちょうどコロナ禍の時期にひきこもっていたAさんの実体験を紹介する。

 Aさんは中学校に入っても、小学校時代の同級生がそのまま繰り上がってきたこともあり、「あいつ、不登校だったんだよ」などと言われていじめられ、学校に行けなくなった。

 Aさんを学校に戻そうと、担任の先生が家庭訪問をしたこともあったが、Aさんは部屋に鍵をかけて抵抗した。それでも無理やり登校するよう指導され、Aさんは耐えきれず家から逃げ出した。すると、担任はAさんを自転車で追いかけ、「学校をやめるか復帰するか、どっちかにしろ!」などときつい言葉をかけてきたという。

「自分が悪いのかと悩んでいたら、おばあちゃんから“行かなくていいよ”と言われて救われました」(Aさん)

 その後、母が見つけた不登校経験者のためのフリースクールに転校。楽しく過ごすことができて、高校に進学した。ただ、中学時代のいじめのトラウマがよみがえり、次第に人に壁をつくるようになり、高校も行けなくなった。