景気対策としての
一時的な消費税減税は愚策?

 しかし、景気対策として一時的に消費税率を引き下げる、というのであれば、賛成しかねる。最大の理由は、引き下げ前に買い控えが発生し、引き下げ後に買い控えの反動増が起き、税率を戻す前に買い急ぎが発生し、戻した後に買い急ぎの反動減が起きるからだ。無用な景気への雑音を4回も生じさせるのは、愚策としか言いようがない。

 例えば所得税の減税であれば、買い急ぎや買い控えといった雑音は生じないので、景気対策としてはそちらのほうが望ましい。ただ、所得減税に際しては、高額納税者の減税額が大きくならないように工夫することや、所得税や住民税を支払っていない低所得者には別の形で恩恵が行き渡るように工夫することなどが必要になる。

 そんなことならば、いっそのこと10万円を国民全員に配布するほうがまだましかもしれない。前回のように、国民全員に10万円を配るだけで莫大なコストと手間を要するのは決して望ましくない。だが、逆説的に言えば、それを見て国民が日本の役所の非効率性を認識し、役所仕事が効率化していく契機になるならそれも悪くない、と前向きに考えられるのではないだろうか。

 本稿は、以上である。なお、本稿は筆者の個人的な見解である。また、わかりやすさを優先しているので、細部は必ずしも厳密ではない。