選挙公約「一時的な消費税引き下げ」が景気対策として“愚策”な理由写真はイメージです Photo:PIXTA

選挙の公約に消費税減税を掲げる政党は少なくない。消費税は人気がなく、選挙民へのアピールとして消費税減税を訴える気持ちは理解できるが、景気対策として一時的に消費税を減税するのは愚策だ。なぜそういえるのか、解説しよう。(経済評論家 塚崎公義)

人気のない消費税
デメリットが多いが…

 消費税は人気がないので、政治家の選挙民へのアピールとして一時的、もしくは恒久的に消費税減税を打ち出したい気持ちは十分に理解できる。しかも、筆者はそもそも消費税をいい税だとは考えていない。したがって、心情的には「景気対策として消費税を一時的に減税しよう」という政策提言には賛同したくなる。しかし、冷静に考えるとそれには弊害が多いので、結果としては賛同しかねる。

 最近、増税というと消費税率がターゲットになることが多い。しかし、消費税が他の税と比べて優れているとは思われない。むしろ、問題が多いと筆者は感じている。

 最大の問題は、消費への悪影響である。消費をするたびに重税感をいや応なく味わわされるのでは、消費の意欲が減退しようというものだ。

 諸外国より日本のインフレ率が低い一因は、値上げで客が逃げることを売り手が嫌っているからだといわれるが、それほど日本の消費者は価格に敏感である。そうであれば、消費税が消費意欲を抑制する効果が諸外国より大きいと考えるのが自然だ。

 しかも日本は内需が弱く、恒常的に景気対策が必要とされているのだから、需要抑制効果の高い税は望ましくない。

 価格表示も、本体価格と税込価格が表示されていてわかりにくい上、軽減税率などという面倒なものもある。しかも、中小企業の益税問題もある。これは、中小企業が消費者から受け取った消費税を納税していないという問題のことだ。

 所得税が累進課税(所得の高い人ほど税率が高い)であるのと比べて、消費税は全員一律の税率なので、金持ち優遇だ、という意見もある。この点については、所得税や相続税の増税などで調整すればいいと筆者は考えている。

財務省は消費税の
メリットを説くが…

 財務省は、少子高齢化時代には現役世代だけではなく皆が税を負担すべきだから、所得税などよりも消費税が好ましいと考えているようだ。しかし、それには異論がある。