◇「絶対」は禁句

「絶対」「必ず」「明らかに」といった強調する言葉が口癖になっている人は討論において不利になる。自分からハシゴをかけて高いところまで登ってしまうがために、ハシゴを外して足をすくうのが簡単になってしまうのである。

 たとえば、「多くの場合、人を殺すのはよくないですよね」という言い方なら、「まあ、そうですよね」と納得させることができる。これを「絶対に人を殺すのはよくないですよね」と言ってしまうと、例外になる場合はないのか考える余地を与えることとなり、自分で逃げ道をふさぐことになる。

 ビジネスシーンであれば、「けっこうな確率で成功すると思いますよ」といった言い方は逃げ道をのこしておくために有用だ。「けっこう」という言葉は確率の言葉と相性がいい。しかも、人によって解釈が違っても許されるというところがポイントである。失敗してしまっても、「五分五分の意味ですよ」と返すことができる。「80%うまくいきます」などと言うと、自分で弱点をつくることになってしまうのだ。

◆手ごわい相手を説得する
◇相手の思考パターンを理解する

 匿名のネット掲示板であれば、権威付けが意味をなさず、論理で説明する以外に方法がなくなる。しかし実社会では、「○○先生もこう言っていました」という権威付けが案外通用するものだ。

 そうした場面でも論破力を活用するには、相手の思考パターンを理解することが大切である。そうすることで、「このボールに対して、こういうボールが返ってくるだろう」と推測しやすくなる。また「そのような考え方をする人であれば、話をこっちに寄せた方がいい」などと説得の仕方を変えることもできる。

 たとえば、礼儀を重んじる人には敬語で話した方がうまくいくし、堅苦しくない雰囲気を好む人にはざっくばらんに語りかけた方がいい。こうしたことは誰でも、無意識的に使い分けている。

 いろんな相手とのキャッチボールを重ねる中で、人の思考パターンをどんどん集めていく。そして、自分なりにモデルを組み立ててストックしておけば、引き出しの精度も高くなるはずだ。そうしていくと、議論しやすくなるだけでなく、人と話すこと自体が楽しくなる。