◆観客の心を揺さぶるテクニック
◇必ず「ジャッジ」をつける

 テレビやネットでの討論番組と同じように、ビジネスシーンにおける議論の場でも、そのやりとりを見てジャッジする人がいる。意識すべきなのは、「目の前の相手と討論することよりも見ている人に自分をどうプレゼンするか」である。

 ジャッジする人の基準を考慮して、その人たちに何を見せるべきかを考え、手持ちの「勝ちパターン」を順番に試して、議論に勝つことを目指す。

 したがって、「ジャッジがいない状況では議論しないこと」が鉄則である。デザイン案を決める議論の例で言えば、これを2人きりで行ってしまうと、「あのデザインはあの人が決めた」などと、あとでいくらでもごまかせてしまう。

「第三者の証言が取れる状況」が大切なのである。1対1の議論は脇の甘さを見せることになってしまう。そこで責めやすいポイントを与えてしまうと、そこから落とされる。

 議論を聞いている人がどのような思考パターンを持っているかを読み解き、そうした第三者に刺さる形で説明することが攻略法となる。

◇場の“メインパーソナリティ”を見抜く

 著者が討論番組で意識しているのは、議論の相手ではなく番組を仕切るメインパーソナリティを見て話すことだ。それもできるだけ大きな声でしゃべる。声が大きければ、それだけで相手は突っ込みにくくなり、議論では有利になる。

 メインパーソナリティはいわば番組の主役なので、その人が興味を持った議論が中心になるのは「お約束」だ。これは会社の会議でも同じである。社内会議では上司が「メインパーソナリティ」になることが多いが、その上司が喜ぶことを言える人物の方が当然評価は高くなる。

 そのためには、会議の前に「この上司はこういう意見を求めているはずだ」ということを想定し、仮説を立てておくことが大事だ。あるいは、「こういうことは上司も知らないだろう」と思われる新鮮なデータを出すと、興味・関心を持たれやすくなる。

 もちろん、上司がキーパーソンでない場合もある。その時も、その場のキーパーソンが誰なのか素早く見極めることが肝要だ。