去年の年末に朝日新聞一面に「追い出し部屋」の記事がどーんと掲載された。

 大手電機会社では「追い出し部屋」が存在していて、そこにリストラ対象で辞めない人を押しこみ、単純作業や他部の応援など、とてもプライドが保てないような仕事をあてがって退職に追い込む非道なことが行われているという内容だった。

「追い出し部屋」は、キャリア開発室などの名前が付けられており、会社側は新たな仕事に挑戦してもらうための準備室だと、決して「追い出し」の事実を認めようとしない。まあ、当然だけどね。

「非情銀行」で描いた「追い出し部屋」

 厚生労働省は、実態を把握して、不当な解雇が行われていないかと監視するらしいが、無理だろう。会社側が認めない以上は実態が分かるはずはない。

 この「追い出し部屋」の事は、小説「非情銀行」(新潮社)で「人材開発室」として描いたことがある。2002年に書いた小説だから、10年たってもまだ同じことが行われているということだろう。

 あの時、「追い出し部屋」の責任者の常務が行員に向って「君たちはコストだ」と言い放つが、今の経営者もそのころと全く変わっていないようだ。

 会社が左前になると、固定費を削るか、固定費を変動費に直そうとする。正社員をリストラすれば、固定費が減少するし、それを臨時雇用に変えると変動費になる。こうやって会社は生き残りを図ろうと考えるのだが、いつの時代も工夫が無い。

「人をなんだと思ってるんだ!」と一発、かましたくなるが、サラリーマンは仕方が無いと諦めるのだろう。

 私も経験がある。早期退職を促す書類が送付されてきた時だ。「なんで俺に送って来たんだ」とものすごく腹が立った。自分では銀行に貢献したつもりだったから、早期退職制度の年齢に引っかっているのは承知していたが、そんな書類を送ってくるとは思っていなかった。