どんなに専門的な技能が必要とされる業界にも、創造的破壊が起こるという例を示すのが、99デザイン(99 designs)だろう。

 99デザインは、グラフィックやウェブデザインをクラウドソースする企業である。クラウドソースというのは、簡単に言えば広く世界に呼びかけてたくさんの人々に仕事をやってもらうという方法のこと。99デザインは、これまでならば専門的な経験や信頼性が重要だったデザインという仕事を、インターネットを通じてオープンに依頼しようというのである。しくみはこうだ。

 たとえば、新しくできた会社がロゴデザインを求めているとしよう。まずは、99デザインのサイトにアクセスして、ロゴに関する情報を入力する。会社名、何をする会社でどんな人をターゲットにしているか、ロゴにスローガンも一緒に組み込みたいか、といった基本的な情報を書き込む。さらに、表示されたいろいろなタイプのロゴの中から、好きなものを選んで下さいとか、ニュアンスとしてどんなタイプの雰囲気を伝えたいかといった感覚的な質問もあったりする。男性的か女性的か、若いか成熟しているか、モダンかクラシックか、遊び心があるか真面目かといったようなニュアンスである。

 次に、どんな条件で仕事を依頼するのかの詳しい内容や条件も入力する。それが終わればクリックを押し、それで仕事依頼は完了だ。

 99デザインは、仕事をコンテスト方式で公開する。つまり、会社が求めるものをウェブ上でオープンにし、そこに関心のあるデザイナーが寄ってきて作業を進め、最後に成果を提出するのだ。その成果の中から、依頼した企業が気に入ったものを選び、そのデザイナーに支払いを済ませる。これで、ロゴがひとつ出来上がるという流れである。

 この方法で99デザインは、先月総額125万8500ドル以上(約1億1327万円)を世界中のデザイナーに支払った。現在進行中のコンテストは1700件以上あり、その報酬総額は54万4900ドル(約4900万円)。今までこの99デザイン上で開かれたコンテストは18万7187件で、1つのコンテスト、つまり仕事依頼に対して平均135案が集まるという。