日本企業資産の現金化を防ぐため
韓国政府は懸命の努力

 徴用工を巡る三菱重工業への賠償命令を不服とする同社の再抗告について、審理をさらに続けるか判断する期限(8月19日)が迫る中、大法院(日本の最高裁に相当)は同日までに決定を出す可能性がある、と複数の韓国のメディアが報じていた。

 その一方で、日本政府は韓国で日本企業に対する資産売却など現金化措置が取られる場合、厳しい「対抗措置」を準備しているとも報じられていた。

 このため、韓国政府は、日本企業の資産の現金化を防ぐため、懸命の努力を行ってきた。

 まず、韓国政府は解決策を見いだすべく、外交部(日本の外務省に相当)の趙賢東(チョ・ヒョンドン)第1次官の主宰で、徴用工支援者団体、法律代理人、学会専門家、言論・経済界から12人が参加する官民協議会を設立し、これまでに3回の会合を行った。しかし、元徴用工団体からは協力が得られていない。

 外交部は大法院に対し、「徴用工問題解決に向けた外交的努力」を説明する意見書を提出した。これは、国家間の利害関係が対立する外交的事案の場合、行政府の立場が優先して反映されるべきという「司法自制の原則」を要請するメッセージだ。

 朴振(パク・チン)外相は7月18日から20日まで訪日し、林芳正外相と会談し、岸田文雄首相を表敬した。両外相は会談で「韓国裁判所が日本企業の資産を現金化する最終結論を下す前に解決策を模索しなければならない」ということで認識を共有したが、具体策にまでは踏み込めなかった。日本側からはまず韓国が解決策を提示すべきと念押しされた。

 尹錫悦大統領も、就任100日目の会見で、徴用工は大法院の判決で法による補償を受けることになっているが、「日本が懸念する主権問題の衝突なしに債権者が補償を受けることができる方法を模索している」と主張した。尹錫悦大統領自身が解決に努力していることを明言することで大統領の責任に転嫁し、批判を免れることができるようになった。

 尹徳敏(ユン・ドクミン)駐日韓国大使は、韓国特派員との懇談会で、日本企業の資産を現金化した場合、「韓国企業と日本企業との間で数百兆ウォン(数十兆円)とも言われるビジネスチャンスを失うこともあり得る」と述べたことの重大さを訴えた。