ステイホームを訴える広告Photo:PIXTA

2020年から新型コロナウイルスの感染拡大が日本でも始まり、多くの人がマスクをしたり、外出自粛したり、医療従事者らも必死に治療に当たるなど、生活と命を守るために努力してきた。しかし、そもそも、これまでの日本政府の新型コロナウイルスに関する主要な対策は正しかったのだろうか。過去の政策ひとつで、日本の未来は変わっていた可能性はあるし、それらをどう評価するかによって今後の向き合い方が変わるかもしれない。前回に引き続き、国際医療福祉大学大学院の高橋泰教授に話を聞いた。(聞き手/ダイヤモンド編集部 宝金奏恵)

>>前編より続く

「危険な感染症」というムードになったが、実際は?

――日本政府は人流を抑制するために「緊急事態宣言」を何度か発令しました。これをどう評価しますか?

 武漢株による第1波に対して、2020年4月7日から5月25日にかけて行われた1回目の緊急事態宣言は、新型コロナのデータが全くと言って良いほどなかった当時の状況から考え、行わざるを得なかったと考えています。

 その後データが集まり始め、年齢階級別死亡人数予測を示し、「変異株が現れない場合、新型コロナは年末頃までに収束し、新型コロナによる死亡の大半は70歳以上、死亡総数3475人」という予測を複数のメディアを通して2020年7月に発表しました。

 しかし、GoToキャンペーン開始直前の7月16日の参院予算委員会で参考人が発言した「GoToキャンペーンが始まると10万人以上が死亡する。国の総力を挙げないとニューヨークの二の舞いになる」という予測がマスコミを中心に広く取り上げられ、私たちの「GoToキャンペーンを行った場合の死亡者数は数千人レベルであり、これはインフルエンザ流行時と変わらない数字である」という主張は社会に受け入れられませんでした。

 残念ながら感染症の専門家も、医療界も、マスコミも「新型コロナは、危険な感染症」という意見に傾倒、国民にさらなる行動自粛を求めていました。

 しかし、私は、「医師は、国民に安心を提供するのが責務であり、必要以上の恐怖を与えるのは良くない」と考えています。