本書の要点

(1)久しぶりにお酒を飲んでお酒に弱くなったと感じるのは、「元の強さ」に戻ってしまうためである。
(2)色がついている酒とそうでない酒では、前者の方が二日酔いになりやすい。また醸造酒と蒸留酒では、醸造酒の方が二日酔いになりやすい。
(3)アルコールは免疫力を下げる。3段階ある人の免疫防御システムのいずれに対しても、アルコールは悪影響を及ぼす。

要約本文

◆飲む前に読む飲酒の科学
◇「酒の強さ」の正体とは

(肝臓専門医・浅部伸一氏)

 久しぶりにお酒を飲むと弱くなったと感じることはないだろうか。こう感じた人は、お酒に弱くなったのではなく、実は「元の強さ」に戻ってしまったのである。

 酒に強いか弱いかは、アセトアルデヒドの分解能力で決まる部分が大きい。お酒を飲むとアルコール(エタノール)は胃や小腸で吸収され、主に肝臓で分解される。そして代謝を重ね、アルコール(エタノール)→アセトアルデヒド(人体にとって有害)→酢酸(人体にとって無害)という順番で変化していくことになる。

 アセトアルデヒドの分解が遅い体質の人は、少量のお酒でも顔が赤くなったり、吐き気をもよおしたりしてしまう。

 一方、昔はお酒に弱かったが、お酒を飲み続けるうちに、お酒に強くなるということがある。こういう人は飲酒量が減ってくると「元の強さ」に戻ってしまう。

 この理由は、アルコールを代謝する2つの経路のうち、1つの経路がお酒を飲み続けることで盛んに使われるようになるためである。

 アルコール(エタノール)が酢酸になるプロセスは大きく分けて下記の2つの経路がある。