割安なナイトタイムに
電力使用時間を寄せる

 旧担当記者のガチ節約術の前提となるのは、料金プラン。デイタイム(午前6時~翌午前1時)とナイトタイム(午前1時~午前6時)で電力量料金(単価)が大きく異なる。デイタイムは1キロワット時23円99銭なのに対し、ナイトタイムは同16円53銭と設定されている。

 そこで電化製品の使用時間をできるだけ、デイタイムと比べると割安なナイトタイムに寄せている。例えばエアコンは稼働開始直後に電力を多く消費するので、午前6時より前にオンにする。予約タイマーを使って、洗濯機や食洗機もナイトタイムに稼働する。風呂はもちろん、ナイトタイムにエコキュート(給湯器)が作ったお湯だ。

 また風呂の追いだきや温度キープはしない。小まめに消灯。エアコンの冷暖房の温度設定は控えめだ。

 わが家はというと、本稿執筆を機に初めて認識したのだが、その月の電力使用量が上がるにつれて3段階に単価が上がっていく料金プランだ。120キロワット時まで1キロワット時19円88銭、121~300キロワット時で同26円46銭、301キロワット時以上は同30円57銭。電力使用量を抑えればその分電気料金は下がるが、使う時間帯をシフトするインセンティブは働かない。そもそも他人の光熱費を聞くまで、恥ずかしながら光熱費を意識したことすらなかった。

 なお、私の自宅にはガス式の床暖房と浴室乾燥機があって勝手気ままに使ってきた。冒頭の電力業界関係者によると、どちらもエネルギーを多く消費するため、一つ備わっていれば業界では「プラチナ客」と呼ばれる。私は気付かぬうちに「ダブルプラチナ客」になっていた。

 旧担当記者は「床暖房、浴室乾燥機はめったに使いません」と、にべもない。

電力使用時間帯のシフトは
電力危機の回避に貢献する

 近年よくいわれている電力危機は、電力の需要に対して供給余力が限界ぎりぎりとなる現象である。特に太陽光発電の出力が落ちてくる夕方に需給逼迫する傾向が強い。危機回避策の一つが、電力使用時間帯のシフトだ。それは電力代の節約策に通じる。日中と夜間の単価が違う料金プランにして安い夜間の電気を意識的に使うことで、毎月の電気代は着実に下がる。

 旧担当記者のガチ節約術はそれを実践しているのである。発電会社の目線でいえば火力発電(燃料は価格高騰する液化天然ガス<LNG>など)のたき増しを抑えられ、電力小売会社の目線でいえば跳ね上がった価格で電力市場から調達せずに済むかもしれないことを意味する。

 現時点で明らかになっている電力各社の節電キャンペーンは、1キロワット時の節電をしても数円~数十円相当のポイント還元。もちろん取り組みは意義深いのだが、得られるポイントだけ捉えれば電力使用者の節電のモチベーションは湧きにくい。

 節電キャンペーンはそれはそれで参加するとして、ガチ節約術による電気代カットこそ財布に優しい。

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