◇めんどくさがりは、自分でめんどくさい状況を作っている

 3つ目のコツは、「両手に違う物を持たない」ことだ。めんどくさがりな人は、同時に複数の作業をしようとしていることがある。これでは脳は混乱して「どの作業をするのかわからない」状態になってしまう。脳は基本的に1つのタスクしかこなすことができない。効率がよいこととは、たくさんの仕事ができることではなく、重要な仕事を短時間で終えることだ。著者はよく、面談で作業の「重要度」「遂行度」「満足度」を点数付けしてもらっている。それをもとに、その人にとって重要度の高い仕事を満足いくようにできるようにするための作業とやり方を見つけようとするのだ。もし両手に物を持ちそうになったら、「今これ重要?」と考えてみよう。

 めんどくさいことの代表格、夕食の片付け。これには4つ目のコツの「次の作業の最初の工程だけ手を付けてやめる」が効く。夕食後にソファに座り、テレビを観て、それから夕食の片付けをしているとしよう。行動を区切って考えてみると、「テレビを観る」から「夕食の片付けをする」の間の壁が厚く、「めんどくさい」が発生していると考えられる。その場合は、夕食の片付けの最初の区切りである「食器を流しに運ぶ」を「夕食を終える」にくっつけるようにするといい。実験すると、1枚だけならすんなりできる。次第に「1枚やるんだったら全部やったほうがラクじゃない?」と作業の印象が変わってくるはずだ。こうすると脳に通じる命令になり、すんなり動けるようになる。

◇ご褒美のポイントは、「1つ先の目標」

 5つ目は、「とにかく手で触る」だ。人間にとってわかりやすい情報は、触覚と固有感覚(筋肉の動きの感覚)だ。洗ってない鍋を見て「めんどくさい」と思ったら、とにかくその鍋を触ってみよう。鍋を洗うジェスチャーをするのもいい。めんどくさい物がどんな物体で、どんな動作で臨めばいいのか。触覚や固有感覚を脳に伝えれば、体は動く。

 人前ではテキパキ行動できるが、家で一人になると何もしなくなる。これは6つ目のコツ「やったことが誰かにつながるのを見る」が関係している。一般的に信じられているように、他人に見られているという緊張感が重要だというわけではない。「自分の作業が誰かのためになる」という設定が、脳に通じる命令なのだ。社会とのつながりで安心を得ていると、腹側迷走神経系が心拍数や血圧をほどよく調整し、リラックスしているがハイパフォーマンスな状態になる。他者とのつながりが見えなくなったときは、自分と同じ境遇の人の物語を読んだり観たりして、自分をとらえ直すことも有効だ。