教育熱心なあまり、子どもの幸福感が最下位になってしまった韓国
前回は、韓国の学校教育におけるICT化の取り組みについてお話しましたが、韓国の学校教育もプラスの側面ばかり持っているわけではありません。
韓国は日本同様、天然資源に乏しい国です。しかも儒教の国です。それゆえ、人材が最も大切な資源であり、教育を最高の美徳としています。そのため、皆、非常に教育熱心で、年収の半分以上を子どもの教育費に充てる親も少なくありません。少子高齢化が日本以上に速いペースで進む中、子どもの教育にお金をかけすぎるあまり、貯金がなく、老後苦しい生活を送る高齢者が増えていることが、最近、社会問題となっているのです。
子どもたちは子どもたちで、小学校の高学年の頃から、放課後、学校で22時ごろまで勉強をして帰宅し、さらにその後、塾や習い事に行くといったケースが珍しくありません。しかも、多くが大学院までいくため、学歴による差別化が図れず、就職活動においても熾烈な競争を強いられています。競争に対するストレスから、自殺する子どもも急増しており、こちらも大きな社会問題となっています。
これらの理由から、経済協力開発機構(OECD)の調査によれば、OECD加盟国23ヵ国の中で、韓国の自殺率は1位で、子どもの主観的幸福度も4年連続最下位だそうです。
10年前、このような状況も予想できた私は、自分の子どもだけは感性豊かな人間に育て上げたいと考え、小学校から、韓国ではなく日本の公立学校に入学させました。しかし、残念ながら、当時の日本の公立学校は“ゆとり教育”のただなかで、韓国に比べて学習環境があまり良くなく、教育内容も“ゆとり教育”どころか、“ゆとり溢れる教育”だと感じました。
最近は、ゆとり教育もかなり見直されたとのことですが、当時の勉強時間は、韓国の6割程度だったと思います。また、教員のICTに対するリテラシーも低いと感じました。
私は、なぜ、日本の公立学校はこのような状況なのだろうかと考えました。そして、韓国と日本の教育制度の違いに、根本原因があるのではないかと思いつきました。