見た目を変えずに中身を変える!数字を合わせる技

 従軍経験もあった山本氏は同書の中で、軍隊内で行われていた帳簿上の数と現物の数とが一致しているかを調べる「員数検査」についてかなり触れている。

 軍隊というのは、軍服から銃弾ひとつとっても、すべて天皇陛下からのありがたい支給品だ。ゆえに、紛失をしてしまうのは許されない大失態だ。もし「員数検査」で部隊に支給された物品の数が合わないようなことがあれば、検査担当者からこんな罵声が飛んできたという。

「バカヤロー、員数をつけてこい」

 山本氏によれば、これは「他の部隊から盗んででも数を合わせろ」と暗に言っているのだ。この「員数合わせ」という名の犯罪行為は、いじめや体罰と同様、軍隊内では表向きはご法度だったが、現場レベルではまん延していた。

「盗みさえ公然なのだから、それ以外のあらゆる不正は許される。その不正の数々は省略するが、これは結局、外面的に辻褄が合ってさえいればよく、それを合わすための手段は問わないし、その内実が『無』すなわち廃品による数合わせであってもよいということである」

 このロジックは、筆者が不祥事企業で不正に手を染める人たちが語っていることと、怖いくらい同じなのだ。外面的につじつまが合っていればいい。それが後にバレて大問題になるということも頭のどこかにはあるのだが、それよりも目の前の「員数合わせ」を優先してしまう。

 とにかく、つじつまを合わせなければという強迫観念があるので、検査データをいじるし、数字を改ざんしてしまうことに、罪悪感が薄れてしまうのだ。

 コンビニのサンドイッチも同じだ。サンドイッチの仕様を変えて売り上げを落とすわけにもいかないし、値上げなどもってのほかだ。そうなるとできるのはデータ改ざんなどと同じ「粉飾」しかない。

 見た目は何も変わらないように、中の具をどんどん減らしていくのだ。