開業医として、常にスキルアップを続けることで、患者に提供できることが増える。患者が喜ぶことでやりがいを感じられ、「この仕事をやっていてよかった」と思うことが増えたという。

「同じことを多くの開業医にも知ってほしいと思うようになりました。互いにわからないことを相談し、学び合い、開業医としての技術を高めて行こうよ、ということですね」

 こうして中西医師は、田坂医師の後を継ぎ、「TFC(トータルファミリーケア)_ML」の責任者に。2016年4月には、「開業医の、開業医による、全ての医師・医学生のための医学塾」をスローガンに、大阪で「21世紀適々斎塾(てきてきさいじゅく)」を開塾。志を同じくする一流の講師陣とともに、病歴聴取や身体診察に重点をおいた生涯教育と医学生教育を毎月、おこなっている。これまで参加した塾生は約400人。

「製薬会社が主催する勉強会は昔からよくおこなわれていますが、開業医が自ら勉強会を主催するケースはほとんどなかった。運営費がかかるため、会費は安くないですが、開業医だからこそ、開業医に何が不足しているのかがわかるという点で、非常に意義のある会なのです。塾生には若い医師も多いですが、私と同じような経歴を持つ年配の開業医も多い。年齢に関係なく、やる気があって、地域の役に立ちたい、という医師が少なからずいることも、患者さんたちに知ってほしいですね」

 中西医師は、研鑽を積み重ねる中で、総合診療の役割がよりはっきり見えてきたたとも言う。

「総合診療ができる医師はもっとたくさん必要ですが、一方で、総合診療を学べばどんな病気も診ることができるのかと言えば、それは違う。どんなに技術を極めてもわからないことはある。だからこそ、適切に他の専門科や病院に連携できるようになります」

 具体的には、診察をしても病名がわからない、標準的な治療をしてもよくならない、重い病気が疑われる、などのケースを適切な医療機関に紹介する。緊急の場合はクリニックに救急車を呼び、患者を搬送すること、などだ。