仮想通貨FTXが経営破綻、詐欺で逮捕の創業者とリスクを見落とした投資家の末路Photo:123RF

12月12日、米仮想通貨(暗号資産)大手取引業者FTXトレーディングの創業者、サム・バンクマン-フリード氏が詐欺などの容疑で逮捕された。11月に同社は経営破綻し、その実態は単純で古典的な投資詐欺の事例とほとんど変わらなかった。にもかかわらず、投資家は、同氏の本性を見抜けなかった。背景には、FTXへの成長期待の高まりを抑えることができず、われ先に資金を投じようとする過剰な強気心理があったはずだ。(多摩大学特別招聘教授 真壁昭夫)

FTXトレーディング創業者が詐欺容疑で逮捕

 2022年11月に経営破綻した米仮想通貨(暗号資産)大手取引業者FTXトレーディングの創業者、サム・バンクマン-フリード氏が詐欺などの容疑で逮捕された。FTXが扱うのは暗号資産だが、冷静に見ると、破綻の実態は単純で古典的な投資詐欺の事例とほとんど変わらない。

 過度な成長期待と、低金利や過剰流動性の継続期待(カネ余り期待)に支えられ、主要投資家は競うようにしてFTXに出資した。バンクマン-フリード氏の政治活動も、FTXの成長期待を高めることにつながった。しかし、22年の年初以降、仮想通貨は下落した。仮想通貨の価値上昇によって過度にバランスシートを膨らませたFTXの資金繰りは行き詰まった。それ以降、同容疑者の実態が暴かれ始めた。

 FTX破綻が世界の株式市場に与えるマイナス影響を考えると、リスク波及経路の一つとして、米国の著名投資家であるキャシー・ウッド氏の運用する投資信託からの資金流出懸念が高まっている。

 今後は規制強化によって、仮想通貨の価値はさらに下落するだろう。それに伴い関連企業の経営破綻も増えそうだ。それが現実になった場合、スタートアップ企業の株式を手放す投資家は増え、世界的に株価調整圧力が高まるだろう。