予想の多くは“無難予想”

 具体的に見てみよう。先ほど出てきた元日の予想という記事は、恐らく21年の12月半ばぐらいに書かれたものだろう。その時点での日経平均は2万8000円ぐらいで、それまでの2カ月あまりで2000円ほど上昇してきている。つまりその時点では上昇トレンドであったわけだ。

 一方、高値の予想平均値が3万1200円、安値の平均値は2万5350円であった。すなわち予想時点での現在価格2万8000円を基準にした場合、上値が11.4%、下値がマイナス9.5%となり、若干上値の方が幅は大きい。しかしながら、どちらにしてもせいぜい10%程度の変動にしかすぎない。いわゆる“無難な予想”にとどまっている。

 さらに言えば、多くの専門家は相場が上昇であれ下落であれ、ひとつの方向に動き出すとコメントの都度、それに合わせて少しずつ予想レンジを修正して上げたり下げたりする。専門家といえども人間だから、自分が自信を持って予想したとしても当初の予想とは異なる速いスピードで動き始めると、不安になるのは当然だろう。

 結果として動き出したトレンドに合わせて微妙に予想を変えていくことになるので、無難な予想にならざるを得ない。

 ところが、相場はしばしば何らかのショックに見舞われ、大きく変動することがある。リーマンショックや20年のコロナ禍が始まった時はわずか1カ月で株価は3分の1下落した。当然、ほとんどの専門家の予想は外れることになる。しかしながら、そうした専門家の予想を当てにしている投資家の立場からすると、マーケットの変化が大きい時こそ当ててほしいと思うのが正直な気持ちだろう。ところがそれができないので、「専門家の予想はいつも当たらない」と感じてしまうことになる。