また少し違った観点から考えてみると、人間には「現状維持バイアス」という心理がある。これは変えた方がよいかもしれないと思っていても変えたことで悪い結果が出ることを恐れるあまり、現状を変えずにそのままにしておくという行動の特徴を表している。前述したように大胆な予想を出すと、その時点で売るべきか買うべきかという何らかの決断を迫られる。一方、そんな予想を出す専門家にしても大胆な予想を出すということは大胆に外れてしまうリスクを負うことになるので、あまりやりたくない専門家が多くなるのも当然だろう。

 これは会社の中における日常的な会議の場合にも、よく見かける光景だ。何か大胆な改善策を打ち出すよりも「特にご意見がなければ、他に考えられる要素がないので、現状に基づいて予測を進めます」と言った方が、参加者の理解が得られやすい。仮に将来何か状況が大きく変わった場合でも、「あの時点では考えられなかった要素が出てきた。想定外だった」ということで弁解することが可能だからだ。

 しかしながら、評論家と違って投資家は自己弁護や弁解をしても意味はない。損をしてしまったのでは何にもならないからだ。専門家の意見や考え方は傾聴に値するのは間違いない。ただし、相場予測の数字だけ見てもあまり意味はない。そうした予測を単に信じるのではなく、彼らの分析結果やコメントを参考としながら、あくまでも自分で考えて判断することが大切だろう。