伊藤忠Photo:SOPA Images/gettyimages

伊藤忠商事がDX(デジタルトランスフォーメーション)コンサルティング事業の拡大を急いでいる。仮想敵はライバル商社の三菱商事などではなく、コンサル絶対王者、アクセンチュアだ。なぜアクセンチュアに対抗戦を仕掛けるのか。勝算はあるのか。連載『コンサル大解剖』では、伊藤忠流のDXコンサルの独自戦略の正体を明らかにする。(ダイヤモンド編集部副編集長 名古屋和希)

伊藤忠社長「DXをさらに広げる」
仮想敵は商社でなくアクセンチュア

 伊藤忠商事といえば、近年は商社の王者たる三菱商事と激しい首位争いを演じてきた。ところが今、対抗戦を仕掛けるのは、“コンサルの王者”であるアクセンチュアだという。

「ICTを利用した産業革命を起こす領域は今後大きく成長する。DX(デジタルトランスフォーメーション)を活用した物流や無人化をさらに広げる」

 伊藤忠の石井敬太社長COOは2022年末のダイヤモンド編集部のインタビューに対し、そう強調。実際、21年度から3カ年の中期経営計画において、成長戦略の多くがDXを前提にされている。

 伊藤忠は足元でDXコンサルビジネスの取り込みに動いているものの、その市場は大混戦の様相となっている。なにしろ、今やDXコンサルにはコンサルティング会社だけでなく、他の総合商社や事業会社も相次いで参戦し、プレーヤーが乱立しているのだ。

“商社”としてのライバルである三菱商事も、21年に日本電信電話(NTT)と共同でDXコンサル会社を設立。両者の強みを生かして、あらゆる産業にDXを促すプラットフォームを構築していく狙いだ。

 だが、伊藤忠がDXコンサルビジネスにおいては三菱商事をライバル視するふしはない。むしろコンサル大手のアクセンチュアに強烈な対抗意識をにじませている。

 デジタル化の加速で、戦略立案という上流から、システム開発や運用といった下流まで幅広い業務を「一気通貫」で請け負うビジネスモデルが拡大中だ。

 そのモデルをいち早く確立し、急成長を遂げているのがアクセンチュアである。巨大化したアクセンチュアのデジタル戦略は競合を寄せ付けないレベルにまで磨き上げられているのだ(『【スクープ】アクセンチュアの“最重要”部門トップが交代へ!「デジタル色」をさらに強める理由』参照)。

 では、なぜ伊藤忠はDXコンサルで大きく先行を許すアクセンチュアをライバルに見立て、対抗戦を仕掛けているのか。

 次ページでは、伊藤忠がアクセンチュアを仮想敵に位置付けるきっかけとなった、数年前のある事件を明らかにする。さらに、伊藤忠がアクセンチュアに対抗するために編み出した独自戦略について解き明かしていく。実は「伊藤忠にあってアクセンチュアにない明確な強み」を生かそうとしていることがわかる。