業績底堅い米アナログ半導体メーカー

 対照的に、米国ではアナログ半導体メーカーの業績が底堅く推移している。例えば、22年10~12月期、アナログ半導体世界トップのテキサス・インスツルメンツの売上高は前年同期比3%減にとどまった。

 背景には、いくつかの要因がある。まず、自動車に用いられるチップの点数は急増している。特に、電動化や自動運転技術の実装に伴って、熱や光、音などをデジタル信号に変換するニーズが急速に高まっている。世界経済後退への懸念などによって先行きは楽観できないが、車載用や産業用分野でアナログ半導体の需要は相対的に底堅く推移するとの見方もある。

 また、製品サイズの大きな自動車などに用いられる半導体は、必ずしも小型化や薄型化を必要としない。それは、最先端の極端紫外線(EUV)露光装置などの確保を急いできた台湾積体電路製造(TSMC)などと異なる。汎用型の製造装置などを用いる分、テキサス・インスツルメンツや世界2位の米アナログデバイセズは、設備投資や減価償却の負担を抑えやすいといえる。

 なお、アナログ半導体の分野では米国に加え、日欧の企業が存在感を発揮している。主要な企業として、欧州のインフィニオン、STマイクロエレクトロニクス、わが国のルネサスエレクトロニクスがある。いずれも汎用型の生産ラインを用いて、車載用などのアナログ半導体を供給している。

 中長期的な時間軸で考えると、自動車の電動化の加速、家庭や生産現場をはじめとした社会インフラ分野でのIoTの実装などに伴い、アナログ半導体の需要は増加すると予想される。各社に求められることは、短期的な需要変動に対応しつつ設備投資を積み増すことで、成長期待の高い分野に既存の技術を応用し、収益源を多角化することだ。

 決算を見る限り、SKハイニックスは自力で新しい製造技術を確立することに苦戦しているようだ。メモリに加え半導体ロジック分野での成長を目指すサムスン電子にも、同じことが当てはまる部分があるだろう。