「内容」にこだわる人ほど会話に詰まりやすい理由

――内容よりも、沈黙を入れずに反応することが大事なのでしょうか。

本多 そのとおりです。沈黙が生まれてしまうと、「本当は機嫌が悪いけど、悪くないように振る舞っている」ように見えてしまいます。

 実はこれは、テレビのトーク番組でも実際に使われているテクニックで、「間」って、思っている以上にインパクトが大きいんですよね。聞き手は、相手の「間」や「沈黙」から、さまざまな情報を読み取ろうとします。

 実は、せっかくゲストに呼ばれても2回目以降、番組に呼ばれなくなる芸人と、チャンスを物にして何度も仕事の依頼がくる芸人の差は、「間髪入れずにすぐに返す」ができるかどうかが、かなり大きい要素だそうです。

本多正識

――たしかに、売れている芸人さんは、「沈黙」をつくらずにテンポよく返しますよね。

本多 ビジネスの世界でも、同じようなことがあるはずです。たとえば、議論の場や営業の現場において、反応の遅い人がいるとおのずと話の輪から遠ざけられてしまうでしょう? 言葉に詰まることが多いと、何を考えているのかわからず、聞き手も不安になってしまいますよね。

 だから、会話をスムーズにすすめるための第一歩は、「内容よりスピード」。「いい答えを出すこと」ではなく、「会話を続けること」を目的にするといいと思います。すぐに言葉が出て来なければ「う~ん」でも「ええっと」でもなんでもいいからつなぎのフレーズを入れるのも効果的だと思います。肝心なのは「(あなたの言ったことについて)考えてますよ」という意志を示してあげること。

「怒ってる?」と聞いてくる人も、きっと不安だからそう尋ねるんだと思うんですよ。何を考えているのか想像できない。自分が何かやらかしてしまったのか、それとも何か嫌なことがあったのか? それを確かめたいから聞いてしまうのだと思います。

「1回で正解を出そう」と意気込むと、会話に詰まってしまいがちです。相手にとってためになる情報、会話がはずむリアクション、実りのある知識……「内容」にこだわりすぎる必要はないと思うと、気持ちがラクになるかもしれませんね。

――なるほど。「会話を続けさえすればそれでいい」と思うと、ちょっと気持ちがラクになります。

本多 まずは、反応、返答をして、相手との会話をスムーズにはじめ、会話を続ける中でいい「内容」が出てくれば、それでいい、と肩の力を抜けるといいですね。