なぜ「第一印象」よりも「第二印象」を重視すべきなのか?

――たとえば、はじめて会う取引先の人と打ち解けたい……という場合も、まずは「会話を続ける」ことを意識するのがいいでしょうか。

本多 そうですね。私が若手芸人によく伝えているのは、「大事なのは『第二印象』」という言葉です。

――「第一印象」ではなく、「第二印象」ですか?

本多 この「第二印象」という言葉は、トミーズの雅くんが生み出したものですが、簡潔にまとめると、

・第一印象=最初の一瞬の印象
・第二印象=最初の一瞬「以降」の印象

 だと考えていただくといいと思います。

「第一印象は0.7秒で決まる」と言われたりもしますし、お笑いの世界でもたしかに、「つかみ」は非常に重要視されています。

 けれど実は、第一印象が抜群に良い人は、ハードルも上がります。第一印象が良いのに越したことはありませんが、それが、自分の実態に見合っていない見せかけでは意味がありません。それならば、時間をかけて自分のありのままを理解してもらった方が得策だと思います。

本多正識

――なるほど……! 第一印象が良すぎると、相手の期待も上がってしまいますもんね。

本多 『M-1グランプリ』の審査で、「最初はよかったけど、後半以降勢いが落ちてしまったね」というコメントが出ることがあるのは、これが原因です。「おもしろそう!」という最初の期待を最後まで超えられないと、最終的な印象は悪くなってしまうんですよね。

 どうしてこういうことが起きるかというと、「第一印象」と「第二印象」のどちらに重きをおくかで、採点方式が変わるからです。

――採点方式が変わる。

本多 「思ったより良い人だった」という第一印象が良い場合は、第一印象が「加点方式」に対し、第二印象は「減点方式」になります。期待値が上がってしまう分、相手の目が厳しくなるのです。

 逆に、第一印象は悪かったが、第二印象が良かった場合は、第一印象が「減点方式」に対し、第二印象は「加点方式」になります。「思ったよりも良い人だった」と言われたりしますよね。この歪な「印象の採点」が、最初と最後で人の評価が変わってしまう理由です。

――第一印象が悪くても挽回の余地はあるし、その後の対応次第では、加点方式で評価してくれるかもしれない。そう考えると、気持ちがラクになります。

本多 お笑い芸人といえども、みんながみんな、最初から会話上手なわけではありません。「頭の回転を速くする方法」には理論があり、少しずつトレーニングして慣れていくものです。

 頭の回転の速さや話術は才能だけではありません。後天的な努力によることの方が大きいかもしれません。今回の本が、少しでも、みなさんのお悩みを解決するヒントになってくれたらうれしいなあ、と思いますね。

【大好評連載】
第1回 「あの人がいるとなぜか盛り上がる」と言われる人が絶対にやらないたった1つのこと
第2回 『M-1グランプリ』出場芸人がやっている「メンタルを整えるスゴ技」

だから、この本。