儲かる農業 下剋上#15Photo by Hirobumi Senbongi

JAグループは、JA共済連などの全国組織が農協に事業の目標を割り振り、農協に営業をやらせてきた。農協の職員を搾取するようなビジネスモデルに、地方から反逆の動きが出ている。特集『儲かる農業 下剋上 ピンチをチャンスに』の#15では、保身を図ろうとする上部団体に対する農協組合長らの怒りの声を紹介する。(ダイヤモンド編集部 千本木啓文)

農協の上部団体の保身の態度を
組合長が一喝する場面が多発

 農協の共済(保険)事業の大元締であるJA共済連に対する農協の不満が最高潮に達している。

 農協職員が営業ノルマを達成するため、不要な契約を結ぶ“自爆営業”や、共済の契約者の不利益になる不適切な契約が問題になっているにもかかわらず、共済連が「農協の問題だ」と、知らぬ存ぜぬの態度を決め込んだからだ。

 この責任逃れに対し、農協が不満を爆発させる場面があった。1月末のJA全中(全国の農協を束ねる代表機関)の会議で、西日本の農協組合長がこう発言したのだ。

「今回の(共済の不正契約の)問題で共済連は農協に(共済契約の)総点検をしろと言うが、農協が(共済連から)与えられたポイント(営業目標)を何としても獲得しないといけない今の事業モデルこそ問題だ。なぜ共済連はそこを見直さず、農協の責任であるかのような話をしているのか。許せない!」

 農協の役員は従来、共済連から飲食やゴルフなどの接待を受け、言われるがままに保険を販売してきた経緯がある。保険の契約実績に対し共済連から支払われる「付加収入」がなければ農協の経営が成り立たないため、不満があっても口をつぐんできたのだ。

 こうした事情がありながらも組合長が共済連を糾弾した意義は大きい。地方の反乱──。勇気ある組合長の発言をきっかけに、共済連はJAグループで孤立することになった。

 上部団体に対して、公然と反論する農協幹部は、前出の西日本の農協組合長だけではない。

 次ページでは、保身を図ろうとする上部団体に対する農協組合長らの怒りの声を紹介する。