中国のサービスなのにAIが中国への理解が浅い?

 一方、李氏も「すべての人がこうした最も進んだツールを使用し、その恩恵を受けられることを期待している。未来のアーニー・ボットも企業独自のモデルと応用の構築を助け、農業、エネルギー、メディアなど多くの業界のスマート化変革を後押しする」と将来を語った。

 百度の株価は一時下落したが、その後、銀行アナリストなどの専門家がアーニー・ボットをテストした後、相次いで好意的な評価を示したことで、逆に上昇するといった動きを見せている。

 企業ユーザーの反応はさらに積極的で、アーニー・ボットのテスターを募集している百度のサイトに、わずか1時間で3万社弱の企業が申し込んだほどだ。16日、中国版SNSのウィーチャット(WeChat)の公式アカウントには8万社以上の企業が、サービスのテストを申請した。

 240万人以上のフォロワーを持つテクノロジーブロガーChapingjunは微博(ウェイボー)で、「アーニー・ボットとBingチャット(マイクロソフトの検索エンジンにAIチャット機能を追加したサービス)の間には一定の差がある。しかし、その差は途方もなく大きいわけではなく、一部の設問に対しては、Bingチャットより優れているところさえある」と指摘している。

 しかし、アーニー・ボットに対する中国ユーザーの不満は解消されていない。

 例えば、絵を描けるという機能宣伝に目をつけ、肉団子を意味する「獅子頭」の煮焼き(紅焼獅子頭)、ロバ肉の火焼きなど、中華料理によくある料理やスナック類の絵画の制作をアーニー・ボットに注文したら何が起こるか。完成したのは、丸ごと一匹のロバが火あぶりを受けるという信じられない絵であったり、ライオンの頭がしょうゆで煮られている様子だったりした。奇想天外な構図で、見るには楽しいが、本来の依頼目的から見れば、まったくでたらめな結果になってしまった。

 アーニー・ボットに、中国語のことわざなどを題材にして絵を描けという指示をした人も相当いた。アーニー・ボットの完成作もなかなかの見応えがあった。例えば、「車水馬龍」ということわざは、車や馬が頻繁に往来する様子を説明するもので、交通量が多いことを強調する言葉だ。しかし、アーニー・ボットは、馬車が走る街道が水浸しになり、一匹の龍がそこを舞い上がっていくというアニメーション的な世界を描き上げた。

 中国の企業である百度が中国社会に広げようとする言語モデルなのに、中国語や中華料理のことをあまり理解していないという問題点がばれてしまったのだ。こうした問題点に対して、からかうユーザーたちもいるが、ほとんど好意的に見ている。ディープラーニング(コンピューターに学習させる機械学習)しているうちに、ChatGPTもアーニー・ボットも大きく成長し、こうした問題をなくしていくだろうと思っているからだ。