中国が「日本企業の誘致」に本気!コロナ前後で営業スタイルに劇的変化Photo:T Turovska/gettyimages

海外ビジネスへの先陣を切った江蘇省

 昨年11月から、中国は長くこだわっていたゼロコロナ政策を変え、シンガポールや日本が実施してきた有効なコロナ対応策の方向へかじを切りはじめた。中でも、この政策動向を素早くキャッチし、新しいビジネス作戦に取り組んだ地域があった。江蘇省だ。

 日本の演歌歌手・尾形大作が熱唱する『無錫旅情』という歌で知られる江蘇省の無錫市は、ゼロコロナ政策が変更される直前の10月27日に、深セン航空の機体をチャーターして、無錫から日本への経済貿易チャーター便を飛ばした。これは武漢ロックダウン以来、初の中国からの海外ビジネス誘致チャーター便となった。中国ビジネスがアフターコロナ時代に向けてキックオフした象徴だ。

 チャーター便の準備作業は昨年8月中旬から始まっていた。無錫市商務局を筆頭に、市政府の10の部署が関わっていて、これは「市の大型作戦」と捉えても過言ではない。無錫市政府はこの政策動向の先を見通し、政治空気の変化を見事に予測して、果敢かつ慎重に準備作業を黙々と進めてきたのだ。

 この作戦の経過を見た私は思わず「春江水暖鴨先知」という北宋時代の詩人蘇軾の詩を思い出した。春先の川水がすこしばかりぬるんでくるのを、いつも川に入っている鴨が一番先に知るという意味だ。

 この季節の変化を誰よりも先につかむためには、やはり鴨のようにいつも川に入っていかなければならない。ビジネスの趨勢(すうせい)や時代の流れを見極めるには、やはり現場に入ることが大事だ。時代の先陣として誰よりも先に走りだした無錫市の行動と判断に大きな「いいね」を押したい。

 このような無錫市の挑戦に焦り出したのが、「殿様商売」ができるはずの上海市だ。