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日本を元気にする経営学教室III

デルの成功例が物語るもの:
現状維持に陥りがちな「SWOT分析」から
「TOWS分析」で問題解決を
――神戸大学大学院経営学研究科教授 松尾博文

シリーズ「オペマネの思考法」(2)

松尾博文 [神戸大学大学院経営学研究科教授],滝波純一 [ヘイ コンサルティング グループ プリンシパル]
【第4回】 2013年2月18日
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 シリーズ「オペマネの思考法」の第1回では、お茶のサプライチェーンの例を用いて、事業プロセスから戦略を組み立てるというオペマネの思考法を紹介した。トップダウンで、降ってわいたような戦略を、現場が事業プロセスに無理やりに落とし込むというような勘違いのリーダーシップの真逆と理解していただきたい。

 今回は戦略立案の有効な手段として使われるSWOT分析の落とし穴を指摘し、オペマネの思考法である「問題解決」からの切り口を考える。SWOT分析を用いて、現状維持を正当化して、問題解決に取り組まない日本の製造業がとるべき思考法を提案する。 

問題解決の障害となる
SWOT分析の落とし穴

 事業戦略立案におけるSWOT分析は、事業部の強み(Strength)と弱み(Weakness)を列挙した上で、事業部にとっての機会 (Opportunity)と脅威(Threat)を列挙し、この4つの項目すべてをまな板の上に乗せてから、戦略を立案するという至極まっとうな試みである。

 SWOT分析の誤用は、S(強み)とO(機会)の組み合わせが強調されて、W(弱み)とT(脅威)が示す問題点に本格的な対応がされないということにある。日本の技術力とものづくりの強みを生かして、日本の製造業を再活性させようというあの掛け声である。日本の製造業が直面する問題解決の障害となっている。

 自分の土俵で戦うことができれば勝てるが、お客さんは相撲を見に来なくなって、相手力士も自分の土俵に上がって来なくなるという寂しい現実になっている。

日本のものづくりの強みは
擦り合わせの能力か

 筆者は1984年にオペマネの研究で、MITから博士号を取得したが、その頃の米国産業界にとっての最大の脅威は、高品質で低価格の日本製品の市場浸透であった。筆者の卒業直後、日本の製造業に対抗するために、MITでは、米国の主要製造業数社の多額の寄付で、マニュファクチャリング・リーダーズ・プログラムという大学院レベルの研究・教育プログラムが開始された。

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松尾博文 [神戸大学大学院経営学研究科教授]

まつお・ひろふみ
京都大学工学部数理工学科卒業。1984年米マサチュ-セッツ工科大学大学院経営学研究科博士課程修了。米ペンシルバニア大学経営大学院客員準教授、米テキサス大学オースティン校経営大学院教授(Fred H. Moore Professorship)、筑波大学社会工学系教授を経て、2004年から神戸大学大学院経営学研究科教授。専攻はオペレーション・マネジメントとサプライチェーン・マネジメント。国際的学術雑誌の論文多数、編集委員を歴任。現在、日本オペレーションズ・マネジメント&ストラテジー学会会長。

滝波純一 [ヘイ コンサルティング グループ プリンシパル]

たきなみ じゅんいち/京都大学工学部卒業、同大学院応用システム科学修士、カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)経営学修士(MBA)。東レ株式会社、ボストン コンサルティング グループを経て、2009年より現職。2010年より同社コンサルティング部門責任者。医薬品、消費財、流通、情報通信等の幅広い業界に対し、グローバル人事制度構築、リーダー育成、M&A支援等、幅広いコンサルティングを実施。


日本を元気にする経営学教室III

【シリーズ「オペマネの思考法」/松尾博文】
オペレーションズ・マネジメント(オペマネ)は欧米のビジネススクールでは必須科目である。オペマネは、製造業とサービス業の事業プロセスを対象とする学問体系で、企業と組織の事業プロセスを中心に、製品、顧客、マーケティング、経営、戦略を考える科目である。本シリーズでは、オペマネの基本的な思考法を解説し、日本の製造業が陥っている問題点の解決策を、事業プロセスの見直しというオペマネの方法論から議論する。簡単な事例、極端な事例、理論と実践を取り混ぜて、論理的に考えるための糧(Food for thought)を提供することを目指す。

 

【シリーズ「カルチャー・トランスフォーメーション」/滝波純一】
企業文化は経営そのものである」というのは、1990年代に瀕死のIBMをよみがえらせたルイス・ガースナーの言葉である。多くの経営者は企業文化が業績に及ぼす影響がいかに大きいか知っている。一方で、企業文化を変革することが、いかに難しいかも、多くの人の知るところである。近年、人事・組織の領域では、日本よりも、海外の方が一歩進んでいると言わざるを得ないのだが、海外では「カルチャー・トランスフォーメーション」として、多くの企業が企業文化の変革に取り組んでおり、そこから有効な方法論も見出されつつある。事業環境が激変する中、日本企業にとっても企業文化の変革は喫緊の課題であり、海外での取組・確立されつつある方法論から学ぶべき点が多いのではないだろうか。本連載では、「カルチャー・トランスフォーメーション」について、紹介していきたい。

 

「日本を元気にする経営学教室III」

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