資産運用アドバイスとは
「儲ける方法を教えること」ではない

 日本FP協会が昨年7月に公開した資料によれば全国でFPの資格を持つ認定者数は、18万7634人となっている。職業別の内訳を見ると証券、銀行、保険等の金融機関に勤務している人が54%と半数以上である。さらに不動産、一般企業や官公庁に勤務する人に加えて学生や主婦等を合計すると39%だから、純粋にFPを業としてやっている人は1割にも満たないということになる。

 実際に金融機関の社員がFP資格を取得する、あるいは会社から取得を命じられているのは、「単なる自社商品の売り込みのセールスではなく、中立的な立場だ」ということをアピールしたいというのが最大の理由なのである。

 また、どこの金融機関にも所属せず、独立してFPを営む人であっても、どこの金融機関からもコミッションを受け取っていない人はごくわずかだ。普通に考えれば、入ってくる収入の高い商品やそれを扱う金融機関を顧客に勧めたくなるのは当然だろう。顧客からの相談フィーやアドバイスフィーのみで収入を得ている人であれば、中立などという表現ではなく、顧客の利益を最大化するということをうたうはずである。

 したがって、当初の資産所得倍増プランの発表では「中立的なアドバイザー」という表現であったものが3月に金融庁が発表した「金融商品取引法等の一部を改正する法律案 説明資料」の中では、どこにも「中立的なアドバイザー」という表現は使われておらず、「顧客の立場に立ったアドバイザー」という言葉が使われるようになった。

 一方、「貯蓄から投資へ」がなかなか進まない理由として「資産運用に関する知識がないから」「購入・保有することに不安を感じるから」を回答する人が多いといった調査結果がある。ここから前述の第3の柱と第5の柱の必要性が強く打ち出されてきたのだろう。確かにこれは大切だし、そういう方向に向かうというのは良いことであるのは間違いない。

 しかしながら、筆者は金融経済教育や資産運用アドバイス業務というのはそれほど簡単なものではないと思っている。この理由は3つある。

 一つ目の理由は「資産運用アドバイス」とは一体何か?ということがあまり正しく理解されていないことだ。

 政府の狙いは、今まで投資したことのない人を投資へ向かわせることのはずだ。ところが投資未経験者は「資産運用アドバイス」という言葉を聞けば、「儲かるものを教えてくれる」と思っているはずだ。ところがそんなものは誰にもわかるはずがない。

 資産運用アドバイスというのは、投資をする人自身が自分で考えて判断することができるように考え方や情報の判断の仕方についてアドバイスするという業務である。でも誰もそんな面倒なことは考えていないし、やりたくもないだろう。

「理屈はいいから儲かるものを教えてくれ」というのが多くの人が考えていることである。ここにまず大きな齟齬(そご)がある。