トランプ氏への支持率が
起訴後に急上昇

 トランプ氏の「特殊能力」は今回の起訴に対してもいかんなく発揮されているようだ。起訴の報道が始まって以来、トランプ氏はSNSを含めてメディアの注目を一身に集め、共和党幹部はこぞって「起訴は不当だ」とトランプ氏を擁護し、結果的に党内の支持率は上がり、寄付の額も急増した。

 そのため共和党関係者からは、「起訴は民主党からトランプ氏の2024年大統領選キャンペーンへの最大の贈り物ではないか」との皮肉った指摘も出ている。

 特にトランプ氏にとって心強いのは起訴後に共和党内の支持率が急上昇していることだろう。

 ロイター通信が4月3日に行った世論調査では、共和党の予備選でトランプ氏に投票すると回答した人は48%で、起訴される前の3月中旬の調査より4ポイント上昇。さらに4月6日の調査では、トランプ氏に投票するという人は58%と大幅に増えた。一方、トランプ氏の有力な対抗馬と目されているロン・デサンティス・フロリダ州知事は21%と2位につけたものの支持率は下がった。

 今回の起訴は、元々党内の指名候補争いで最有力だったトランプ氏の基盤を一層強くするのに役立ったことは間違いないだろう。しかし、問題はそれがいつまで続くのかということだ。

 そのカギとなるのはニューヨーク州の裁判の行方に加え、他の3つの刑事事件の捜査がどうなるかである。

 トランプ氏は現在、(1)連邦議会議事堂襲撃事件を扇動し、平和的な政権移行を妨害しようとしたとされる件、(2)機密文書をフロリダ州の自宅に不適切に持ち出した問題、(3)2020年大統領選のジョージア州の選挙結果を覆そうとした件で、連邦検事とジョージア州の地区検事による捜査を受けている。

 これら3件はいずれも口止め料を巡るケースより罪が重いとされており、このうち1件、あるいは3件全てで起訴された場合、共和党内で「トランプ氏に代わる選択肢」を模索する動きが活発化するかもしれない。