怒りは、執着していたものが失われたり、欲していたものが手に入らなかったときに起こる心の反応です。すでに終わった過去のことを引きずっている状態という意味で、悲しみと同じものとも言えるでしょう。今回は、怒りを増幅させないための、常日頃の心の持ちようを紹介します。

怒りと悲しみは、どちらも過去のもの

 怒りは悲しみと、よく似ています。なぜなら、怒りと悲しみはどちらも、執着していたものが失われたとき、欲していたものが手に入らなかったときに起きる、心の反応だからです。

 たとえば、もし、買ったばかりのデジタルカメラを、家族が床に落として壊してしまったら、あなたは怒りますか?それとも悲しみますか?その両方でしょうか?

 それでは、同じデジタルカメラを、あなたが飲んでいたコーヒーをうっかりこぼして、ビショ濡れにしてしまったら、どう感じますか?台風でバッグごと飛ばされてしまったら?初期不良で使えなかったら?あなたが買った翌日に、同じメーカーから、同じ値段でもっとすぐれた機能の新機種が発売されたことを知ったら?

 欲望が期待どおりに満たされないと、私たちはがっかりしたり、欲求不満になります。欲求不満が重なるといらだちになり、やがて、はっきりとした怒りをおぼえます。

 けれども、期待に反するできごとに対して自分が影響力を持たないときは、私たちは怒る代わりに、悲しくなります。いったん怒ったあとであっても、自分は無力だと納得したり、取りかえしがつかないと諦めると、怒りは悲しみに変わります。

 いずれにしても、すでに終わったことを引きずっている状態という意味で、怒りと悲しみは同じものです。

 怒りと悲しみは、抱えているとつらい、まさに心の痛みです。怒りや悲しみによって心がかき乱されるとき、私たちは「はらわたが煮えくり返る」ように感じたり、「胸が引き裂かれる」思いで胸に手を当てたりしますね。これは決して偶然ではありません。

 身体と心はエネルギーのレベルが違うだけでもともと同じものからできています。心への負担が大きいと、身体の痛みや不調となってあらわれるのは、ごく当たり前のことなのです。ですから、怒りや悲しみを上手に手放すことは、身体の健康を保つためにも大切です。